2023年基準地価から見る東京の地価動向と不動産投資【プロが教える不動産投資コラム】
毎年9月中旬頃になると「基準地価(都道府県地価調査)」が発表されます。「基準地価」は毎年7月1日時点の全国2万1381地点の地価です。「公示地価」と並んで重要な地価の指標となります。
地価はマンション価格やマンションの資産価値はもちろん、賃料を始め経済の動向にも大きな影響を及ぼします。最新の「基準地価」とマンション投資について検証してみたいと思います。
地価は全国的に上昇傾向
地価は景気の変動や地域的な要因などによっても大きく変動します。不動産の需要の多いエリアの地価は上昇する事が多いので、その地域の経済的な動向・住宅需要なども重要となってきます。
新型コロナが5類に移行し、日本経済も回復の度合いが強まってきています。株価も上昇しつつあり、岸田総理の推進のもとで給与水準も少しずつですが上昇してきています。
こうした中で地価も新型コロナによって一時調整局面にあったものが回復基調が見られる様になってきました。地域によって温度差も大きいですが主に都市部、都心部などを中心として、さらにその周辺部にまで地価上昇が拡散してきています。
2023年の基準地価によると、全国の全用途の地価は前年比1.0%の上昇となり、2年連続の上昇となりました。全国的に地価は回復基調にある事が分かります。
三大都市圏では全用途で2.7%の上昇と、前年1.4%の上昇から上昇率が拡大しています。
東京圏は三大都市圏の中でも最も地価上昇率が高く、住宅地で2.6%、商業地で4.3%の上昇と昨年に引き続き地価の上昇が継続しています。
地価回復の早い東京圏では不動産市場の今後の活性化が期待できる一方、不動産価格の上昇傾向が続く可能性もあります。これから不動産投資を考える方にとっても地価上昇により資産価値の上昇や賃料の上昇などの恩恵を受けられる場合もあります。
<基準地価>三大都市圏の地価変動率の推移
全用途 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
全国 | 0.3% | 1.0% |
東京圏 | 1.5% | 3.1% |
大阪圏 | 0.7% | 1.8% |
名古屋圏 | 1.8% | 2.6% |
三大都市圏 | 1.4% | 2.7% |
住宅地 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
全国 | 0.1% | 0.7% |
東京圏 | 1.2% | 2.6% |
大阪圏 | 0.4% | 1.1% |
名古屋圏 | 1.6% | 2.2% |
三大都市圏 | 1.0% | 2.2% |
商業地 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
全国 | 0.5% | 1.5% |
東京圏 | 2.0% | 4.3% |
大阪圏 | 1.5% | 3.6% |
名古屋圏 | 2.3% | 3.4% |
三大都市圏 | 1.9% | 4.0% |
東京圏の地域別の地価は
東京圏は日本を代表する巨大な経済圏を形成しており、人口が多く経済力も高い事もあり不動産の需要も多い傾向にあります。このため経済の発展にも反応して地価もいち早く上昇しています。
東京圏の地価を見ると、<住宅地>では一都三県の中では千葉県が平均で3.7%の上昇とトップとなりました。さらに地域別では東京都心部が5.0%と最も高く、それ以外の都区部でも4%前後の高い上昇率となっています。東京区部の住宅需要は依然として高く、さらに千葉県などにも移行してきている事が分かります
<商業地>では千葉県が平均で5.2%と高い上昇率となりました。地点別に見ると「木更津」や「浦安」、「おおたかの森」や「行徳」、「船橋」などの東京などにもアクセスしやすい地点の地価が大きく上昇しています。
東京都の商業地は平均で4.6%の上昇となり、区部平均が5.1%、区部北東部が5.3%と高い上昇率となりました。
神奈川県では横浜市が5.3%、川崎市が5.6%とそれぞれ高い上昇率となりました。横浜市の「みなとみらい」や「横浜駅前」「新横浜」などの地点の上昇率が高く、再開発による街の発展が地価上昇につながっていると考えられます。
<基準地価>東京圏の地域別地価変動率の推移
住宅地 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
東京都 | 1.6% | 3.1% |
東京都区部 | 2.2% | 4.2% |
区部都心部 | 3.1% | 5.0% |
区部南西部 | 2.1% | 3.8% |
区部北東部 | 2.0% | 4.2% |
多摩地域 | 1.0% | 2.2% |
神奈川県 | 0.9% | 2.2% |
横浜市 | 1.3% | 2.5% |
川崎市 | 1.3% | 2.4% |
埼玉県 | 1.1% | 1.8% |
千葉県 | 1.6% | 3.7% |
商業地 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
東京都 | 2.0% | 4.6% |
東京都区部 | 2.2% | 5.1% |
区部都心部 | 1.5% | 5.0% |
区部南西部 | 2.8% | 5.0% |
区部北東部 | 2.8% | 5.3% |
多摩地域 | 1.5% | 3.0% |
神奈川県 | 1.9% | 4.4% |
横浜市 | 2.7% | 5.3% |
川崎市 | 2.8% | 5.6% |
埼玉県 | 1.2% | 2.3% |
千葉県 | 2.8% | 5.2% |
区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区
区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区
区部北東部:墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区
東京都区部は都心周辺のエリアの地価も上昇
次に東京都区部の地価動向について見てみましょう。
東京都の地価動向を区別に見てみると、<住宅地>では地価上昇率が最も高いのは「豊島区」で6.2%の上昇となりました。
「豊島区」では代表的な駅である「池袋」駅はJR東日本の乗車人員ランキングを見ても第2位となっていますが、現在でも池袋駅東側エリア及び西側エリアにおいても再開発が続いています。駅の周辺には商業・ビジネス街が発展しており、また埼玉方面からもアクセスしやすい立地にあり、将来的な就業人口の増加も期待できるエリアである事なども地価上昇の要因として考えられます。
2位の「文京区」は都心に近く大学も多いエリアです。3位の「品川区」は多くの路線が利用できる立地にあり、大井町などでも大型の再開発が進行しており住宅需要も多い事から地価も上昇していると考えらます。
以下「荒川区」「台東区」「目黒区」「港区」などが5%以上の上昇率となりました。
<商業地>では「北区」がトップで7.3%の上昇となりました。北区には京浜東北線、湘南新宿ライン、南北線、山手線を始め多くの路線が運行しており都心にアクセスしやすい立地です。「赤羽」駅周辺には多くの商業エリアが広がり、その他のエリアも昔ながらの暮らしやすい街となっています。
次いで「台東区」が7.0%の上昇となりました。台東区は「浅草」などのあるエリアです。「文京区」「豊島区」「荒川区」なども6%以上の上昇となりました。
こうした東京北東部の地価が大きく上昇している事から、東京周辺部の商業エリアの土地需要が高まっている事が分かります。
東京23区地価上昇率のランキング
<住宅地>
1位 | 豊島区 | 6.2 |
2位 | 文京区 | 6.1 |
3位 | 品川区 | 5.5 |
4位 | 荒川区 | 5.5 |
5位 | 台東区 | 5.4 |
6位 | 目黒区 | 5.3 |
7位 | 港区 | 5.0 |
8位 | 墨田区 | 4.9 |
9位 | 江東区 | 4.9 |
10位 | 北区 | 4.7 |
<商業地>
1位 | 北区 | 7.3 |
2位 | 台東区 | 7.0 |
3位 | 文京区 | 6.8 |
4位 | 豊島区 | 6.6 |
5位 | 荒川区 | 6.5 |
6位 | 品川区 | 5.7 |
7位 | 中野区 | 5.7 |
8位 | 杉並区 | 5.6 |
9位 | 板橋区 | 5.6 |
10位 | 目黒区 | 5.2 |
地価上昇地点ランキング
都心のターミナル駅周辺では大規模な再開発が進行しており、過去には地価も大きく上昇しました。しかし現在では地価は高止まりしており地価上昇率自体はそれほど大きくなっていません。都心部から都心の周辺部へと地価が上昇してきている傾向となっています。
地価の上昇した地点を個別に見てみると、<住宅地>では「豊島区北大塚1丁目」の地点が6.9%でトップとなりました。JR「大塚」駅に近く、山手線沿線であり「池袋」駅を始め「新宿」「渋谷」駅方面や「東京」駅方面へも行きやすい立地です。
2位は荒川区の「南千住8丁目」の地点となりました。「南千住」駅に近いリバーサイドエリアです。再開発によりマンションの建設も進みタワーマンションも多く見られるエリアです。3位は「豊島区高田1丁目」の地点で、山手線内側で東京メトロ副都心線「雑司ヶ谷」駅に近く、新宿や池袋などにも行きやすいエリアです。
<商業地>では台東区の「浅草」が1位から4位までを占めました。
「浅草」は国内はもとより海外からの観光客も多い日本を代表する観光地でもあります。「裏浅草」と言われる浅草寺北側のエリアなどもその歴史と交通利便性から人気が上昇しています。今後インバウンドの増加が期待される中で、浅草エリアの地価上昇は続く可能性もあります。5位には北千住駅西側の「足立区千住三丁目」の地点となりました。
最寄りの「北千住」駅は多くの路線が利用でき交通利便性が高く、また大学も多く移転してきている街です。
このように東京の東側の地価が上昇してきている傾向が読み取れます。
東京都の地価上昇率ランキング
<住宅地>
所在(「住居表示」) | 上昇率 | |
---|---|---|
1位 | 豊島区 「北大塚1-24-3」 | 6.9% |
2位 | 荒川区 「南千住8-4-7」 | 6.9% |
3位 | 豊島区 「高田1-36-11」 | 6.9% |
4位 | 杉並区 「久我山1-5-17」 | 6.8% |
5位 | 豊島区 「西池袋4-16-3」 | 6.8% |
<商業地>
1位 | 台東区 「浅草1-29-6」 | 11.9% |
2位 | 台東区 「西浅草2-13-10」 | 11.5% |
3位 | 台東区 「浅草1-30-11」 | 9.9% |
4位 | 台東区 「浅草1-9-2」 | 9.9% |
5位 | 足立区 千住三丁目70番2 | 9.7% |
今後も地価上昇が続くか
インバウンドも増加してきており2023年1~8月には累計で1500万人を超えました。過去にインバウンドの増加により大きく地価が上昇したケースも多くありましたが、今後もインバウンドの増加が地価に与える影響も大きいと考えられます。
東京では再開発を促進する「都市再生緊急整備地域」や「MICE※」などを促進しており、さらに岸田総理は「資産運用特区」として東京などの都市を国際金融都市として、世界からの投資を呼びかけており、外資系企業の参入や海外からの投資も増加する可能性もあります。このように東京の経済的な上昇要因が多くあり、地価上昇も続く可能性があります。
しかし全ての地価が上昇している訳ではありません。一方で「地域格差」が拡大する可能性もあります。つまり地価上昇の恩恵を受けられるエリアに不動産投資をする事が重要となります。
都心周辺部でも都心にアクセスしやすく、交通利便性の高い、生活環境の優れたエリアのマンションは住宅需要も多く、地価上昇による恩恵もうけやすいと言えます。今後も「新線・新駅」「再開発」なども地価上昇のキーワードと考えられます。
今後の不動産投資の参考にして頂ければ幸いです。
※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称です。<出典:観光庁「MICEの誘致・開催の推進」>