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2024年 路線価からみる地価動向【プロが教える不動産投資コラム】

国税庁から2024年7月1日に2024年の路線価(2024年1月1日時点)が発表されました。今回のコラムではこの路線価から地価の動向と不動産投資との関係について述べてみたいと思います。

3つの地価とは

地価は土地の価格を示す指標ですが、代表的なものとして3つの地価があります。

(1)「公示地価」

1月1日時点の地価動向で1年に1回発表されます。調査地点は全国約2万6,000ヵ所と多く1970年から実施されています。 土地取引の目安ともなります。

(2)「基準地価」

7月1日時点の地価動向で1年に1回発表されます。調査地点は約2万1,000ヵ所です1975年から実施されています。 公示地価を補完する意味合いもあります。

(3)「路線価」

相続税の基準となる地価で国税庁から1年に1回発表されます。 地点ではなく道路(路線)に面する土地の1㎡当たりの価格となります。

その他には「地価LOOKレポート」があります。これは都市部など主要都市の高度利用地の地価の動きを示すもので年に4回発表されます。

路線価とは

路線価は公示地価を基に国税庁から毎年7月に発表されます。土地の租税の歴史は古く、明治時代には土地評価の方法や税率なども決められています。農地の場合は収穫高から経費を引いたものであり、今で言う収益還元法的な考えとなっていました。

明治38年には相続税が創設されましたが、この評価額は「賃貸価格の20倍」から「時価」となりました。国税庁の資料によると当時から詳細な土地評価基準が作成されており、現在の路線価式の考え方があったと推測されています。

昔は土地の売買が行われると契約書である「沽券(こけん)」が発行され、土地の権利証であるとともに土地の価格も証明される重要な書類として機能しました。沽券の沽とは売買の意味です。なお今でも「沽券にかかわる」という言葉が残っています。またその後は明治6年の地租改正により新たに「地券」が導入されました。現在の登記簿に当たるものと考えられます。

2024年の路線価は<全国>

それでは最新の路線価の動向について見てみましょう。2024年の路線価は全国平均で2.3%上昇し、3年連続の上昇となりました。

都道府県別では最も上昇率が高かったのは福岡県で5.8%、次いで沖縄県が5.6%、東京都は3位となり5.3%の上昇となりました。

全国で最も路線価が高かったのは「東京都中央区銀座5丁目」(鳩居堂前)の通りで39年連続のトップとなりました。

2位は大阪・御堂筋の2024万円、3位が横浜・横浜駅西口バスターミナル前通りで1696万円、4位が名古屋・名駅1丁目名駅通りで1288万円、5位が福岡・天神2丁目渡辺通りで944万円となりました。

大都市圏の中心部でなどで路線価が高い事が分かります。

都道府県庁所在地都市の最高路線価ランキング

所在地路線価対前年変動率
1東京都中央区銀座5丁目 銀座中央通り4,424万円/㎡3.6%
2大阪市北区角田町 御堂筋2,024万円/㎡5.4%
3横浜市西区南幸1丁目  横浜駅西口バスターミナル前通り1,696万円/㎡1.0%
4名古屋市中村区名駅1丁目 名駅通り1,288万円/㎡0.6%
5福岡市中央区天神2丁目 渡辺通り944万円/㎡4.4%
<国税庁「令和6年分都道府県庁所在都市の最高路線価」より作成>

東京国税局管内の路線価動向は

それでは東京エリアの路線価はどうなっているでしょうか。

東京国税局では東京都・千葉県・神奈川県・山梨県が管轄となっています。一都三県というと埼玉県が入りますが、埼玉県は関東信越国税局の管轄となっています。

この東京国税局管内の路線価の動向を見てみましょう。

高価格ランキングは<東京国税局管内>

価格の高い地点では、先ほど触れたように、1位は銀座中央通りの地点で1㎡当たり4,424万円で、38年連続で日本一となっています。

以下銀座中央通りや渋谷、新宿、四ツ谷、有楽町を始め東京都心部や横浜駅前などの路線価が高くなっています。

いずれも交通利便性が高くオフィスや商業施設が多く集まるエリアで就業人口も多いと言えます。こうしたエリアはマンション価格も高騰しているため、ワンルームマンションの発売立地は都心周辺部に移行している傾向があります。このため都心周辺部の交通利便性の高いエリアでは地価も上昇している傾向にあります。

ではどんなエリアの地価が上昇しているのかを次に見てみましょう。

東京国税局管内 2024年路線価高価格ランキング

順位署名最高路線価の所在地最高路線価
令和6年分令和5年分
(千円)(千円)
1京橋中央区銀座5丁目
 銀座中央通り
44,24042,720
2渋谷渋谷区宇田川町
 渋谷駅側通り
32,24029,440
3新宿新宿区新宿3丁目
 新宿通り
30,88029,740
4四谷新宿区新宿3丁目
 新宿通り
27,92026,960
5麹町千代田区有楽町2丁目
 晴海通り(注)
25,520(25,180)
24,640
6日本橋中央区八重洲1丁目
 外堀通り
18,64018,160
7麻布港区北青山3丁目
 表参道
18,56017,520
8横浜中横浜市西区南幸1丁目
 横浜駅西口バスターミナル前通り
16,96016,800
9港区新橋2丁目
 新橋西口駅前広場通り
14,80014,080
10豊島豊島区東池袋1丁目
 グリーン大通り
12,57011,670

地価上昇率の高いエリアは<東京国税局管内>

東京国税局管内で最も上昇率が高かったのは浅草1丁目の「雷門通り」で前年比16.7%の上昇となりました。浅草はインバウンドの増加により、地価も大きく上昇しています。

2位は横浜市の「二俣川駅南口前通り」で15.9%の上昇です。新横浜線の開通で都心へのアクセスが向上し、駅前では大規模な再開発が進んでいます。

3位は津田沼駅近く「ぶらり東通り」の地点で15.4%の上昇。東京都心へもアクセスしやすく、大規模商業施設が多い利便性の高い街です。

4位は北千住駅「西口駅前広場通り」で15.1%の上昇。北千住は多くの路線が乗り入れ交通アクセスが良く、また大学も多くあり単身世帯住宅の需要も多い街です。

5位は千葉駅東口駅前広場で14.9%の上昇です。三越千葉店跡地では再開発も進んでいます。

以下、鎌倉、横浜、本八幡、中野、本厚木など交通利便性・生活利便性の高い主要駅前などの上昇率が高くなっています。

駅前にタワーマンションや商業施設が開業し、街がますます発展するケースも散見されます。今後もこうしたエリアのマンションの発売も増える可能性もあります。

東京国税局管内 2024年路線価上昇率ランキング

順位署名最高路線価の所在地最高路線価の
対前年変動率
令和6年分令和5年分
(%)(%)
1浅草台東区浅草1丁目
 雷門通り
16.77.0
2保土ケ谷横浜市旭区二俣川2丁目
 二俣川駅南口駅前通り
15.96.8
3千葉西習志野市津田沼1丁目
 ぶらり東通り
15.411.8
4足立足立区千住3丁目
 北千住駅西口駅前広場通り
15.18.8
5千葉東千葉市中央区富士見2丁目
 千葉駅東口駅前広場(注)
14.9
6鎌倉鎌倉市小町1丁目
 鎌倉駅東口駅前通り
14.36.5
7神奈川横浜市神奈川区鶴屋町2丁目
 市道高島台107号線(鶴屋橋北側)
14.114.2
8市川市川市八幡2丁目
 本八幡駅前通り
13.410.3
9中野中野区中野5丁目
 中野駅北口駅前広場前
13.28.5
10厚木厚木市中町2丁目
 本厚木駅北口広場通り
11.912.2
<東京国税局「令和6年分 東京国税局各税務署管内における最高路線価」>

タワーマンションの評価額の変更とは

路線価は相続税評価の基準ともなります。土地の評価額をマンションの戸数で割りますので、戸数の多いタワーマンションは評価額が低くなります。

同じ敷地のマンションでは同じ広さでは同じ評価となりますので、タワーマンションは上層階程価格が高い傾向にありますが、評価額は低層階と同じでしたので、タワーマンションの上層階における相続対策が可能となっていました。

このため2024年からは価格の乖離を調整するルールが導入されています。これによりタワーマンション節税を防ぐ事になります。

但しワンルームマンションの場合はよほど高層のマンションでなければ上層階と低層階では大きな価格の差がある事は少ないので、この影響はほとんどないと考えられます。

東京及び周辺部の地価は上昇傾向にあり、地価上昇の波は都心周辺部に移行してきている状況となっています。今後も都心への交通利便性の高いエリアは開発が続き、地価の上昇も続く可能性があります。

商業施設やホテル、タワーマンションなどの土地需要も多く、ワンルームマンション用地の取得も難しくなってきており、好立地のワンルームマンションの需要と資産性も今後ますます高まってくるのではないでしょうか。

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