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注目の株価指数「JPXプライム150指数」。「稼ぐ力」を持つ日本企業の選定基準

さまざまな銘柄の株価の値動きをまとめて表す株価指数には、いろいろなものがあります。2023年7月に、新たに誕生した「JPXプライム150指数」もそんな株価指数のひとつです。今回は、JPXプライム150指数とは何か?から、JPXプライム150指数に選ばれている銘柄とその基準、JPXプライム150指数を利用した投資を紹介します。

そもそもJPXプライム150指数とは?

JPXプライム150指数は「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」と定義されています。平たくいうと、日本を代表する「稼ぐ力」を持つ銘柄で構成される株価指数だというわけです。

株価指数というと、日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)、JPX日経400を思い浮かべる方もいるでしょう。

日経平均株価は、日本経済新聞社が算出している株価指数。東京証券取引所(東証)プライム市場に上場している銘柄から225社を選び、株価の平均をもとに計算します。またTOPIXは、東証プライム市場に上場する全銘柄の時価総額をもとに、東証が計算している株価指数です。

JPX日経400はROE(自己資本利益率)や営業利益率、コーポレートガバナンス(企業統治)の要素も加味して選定された「投資者にとって投資魅力の高い会社」400銘柄によって構成される株価指数です。JPX総研と日本経済新聞社が算出・公表しています。

これに対して、JPXプライム150指数は、東証プライム市場に上場する銘柄から選び出した、収益性や成長性に優れた150銘柄の時価総額を元に東証が計算します。JPXプライム150指数は、稼ぐ力を持つ価値創造企業で構成された株価指数だというわけです。

JPXプライム150指数は、2023年5月26日を基準(1,000ポイント)とし、2023年7月3日より算出・公表されています。

JPXプライム150指数の構成銘柄はどう選ぶ?

JPXプライム150指数の構成銘柄は、東証プライム市場に上場する銘柄のうち、時価総額の高い500銘柄から2つの基準によって選ばれます。

①エクイティ・スプレッド

エクイティ・スプレッド(Equity Spread)は、企業の収益性と投資家が期待するリターンの差分を表す言葉。「ROE(自己資本利益率)-株主資本コスト」で計算されます。

ROEは自己資本をどれだけ効率よく使ってお金を稼いだかを示す指標で、株式投資では企業の収益性や成長性をはかるためによく利用されます。このROEから、企業が資金を調達するためにかかるコスト(=投資家が期待するリターン)を引いたものがエクイティ・スプレッドとなります。

簡単にいえば、エクイティ・スプレッドがプラスの企業は価値を生み出している企業。そしてエクイティ・スプレッドが高い企業ほど、投資家の期待を超える収益をあげる、資本収益性の高い企業だと判断できる、というわけです。

JPXプライム150指数では、エクイティ・スプレッドが高い75銘柄を選定します。

②PBR

PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産の何倍かを表す指標です。株式投資では、その銘柄が割安か割高かを判断するためによく利用されています。

PBRは「株価÷1株当たり純資産(BPS)」で計算されます。株価がBPSを上回ると、PBRは1倍を超えるため、企業の資産が価値を生み出していると判断されます。JPXプライム150指数では、PBRが1倍を超えている会社のなかから、時価総額が大きい順に75社を選定します。

なお、日本の上場企業には、PBRが1倍に満たない企業が約半数あります。PBRが1倍未満なら「割安だ」と判断することもできるのですが、割安だからといって、必ずしも「お買い得」とは限りません。

PBRが1倍を切るということは、理論上、「会社の運営を続けるよりも解散して資産を株主に配ったほうが、株主がたくさんのお金を受け取れる」と市場が判断していることを意味します。極端に言えば、魅力がなく、人気がない銘柄です。企業が付加価値を生み出せていない状態なのです。

PBRが1倍未満の企業が多いという事態を重く見た東証は2023年3月、PBRが1倍割れになっている上場企業に対してPBRの改善策を講じるよう要請しました。PBR1倍割れの企業は、効率的な経営を行って株価を上昇させるか、自社株買いや増配などを行って1株当たり純資産を減らすことが求められます。

JPXプライム150指数の選定条件

東証のウェブサイトより

JPXプライム150指数の構成銘柄は?

JPXプライム150指数の構成銘柄は、東証により公表されています。

JPXプライム150指数の構成銘柄

東証のウェブサイトより

JPXプライム150指数の構成銘柄は、東証プライム市場の時価総額上位500社から選ばれています。日本を代表する時価総額1兆円以上の企業が中心で、日本の株式市場の約50%をカバーしています。なお、日本の大会社といえばトヨタ自動車(7203)や三菱商事(8058)、日本郵政(6178)などを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、JPXプライム150指数の構成銘柄には含まれていません。

「選定基準」の欄に「ES」とある銘柄はエクイティ・スプレッド、「PBR」とある銘柄はPBRの基準で選定されています。

次の企業は、エクイティ・スプレッドの基準もPBRの基準も満たしています。

・日本たばこ産業(2914)

・神戸物産(3038)

・信越化学工業(4063)

・野村総合研究所(4307)

・塩野義製薬(4507)

・中外製薬(4519)

・小野薬品工業(4528)

・ディスコ(6146)

・アドバンテスト(6857)

・レーザーテック(6920)

・シマノ( 7309)

・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)

・オリンパス(7733)

・HOYA(7741)

・任天堂(7974)

・伊藤忠商事(8001)

・丸紅(8002)

・東京エレクトロン(8035)

・SGホールディングス(9143)

・日本電信電話(9432)

・KDDI(9433)

・ソフトバンク(9434)

・カプコン(9697)

・ファーストリテイリング(9983)

それだけ、収益性・成長性が高い銘柄だということができそうです。

構成銘柄の上位にはソニーグループ(6758)、キーエンス(6861)、日本電信電話(9432)などがあります。業種別に見ると、電気機器のウェイトが27%と、全体の4分の1を占めています。そのほか、情報・通信業、医薬品の関連銘柄も多めです。

また、時価総額の平均値はTOPIXが3,565億円なのに対してJPXプライム150指数は2兆6,363億円、中央値はTOPIXが504億円なのに対してJPXプライム150指数は1兆5,380億円となっています。

つまり、JPXプライム150指数に選ばれるということは、優良大型株だということを意味します。JPXプライム150指数は今後、優良大型株を選ぶときの基準になるかもしれません。

なお、JPXプライム150指数の構成銘柄は毎年1回、8月の最終営業日に定期的に入れ替えられます(2024年以降)。現時点で、JPXプライム150指数に連動するインデックス型の投資信託やETFなどはありませんが、デリバティブ市場を運営する大阪取引所にJPXプライム150指数先物が上場予定。2024年3月18日より取引ができるようになる予定です。

■JPXプライム150指数のパフォーマンスはいまいち?

算出・公表が始まったJPXプライム150指数ですが、肝心のパフォーマンスが冴えないのが気になるところです。

JPXプライム150指数のチャート

東証のウェブサイトより

JPXプライム150指数は2023年5月26日を基準(1,000ポイント)にしています。本校執筆時点(2023年11月22日時点)で約半年が経過していますが、上下の大きな展開になっていて、右肩上がりになっていないことがわかります。

上述のとおり、JPXプライム150指数を構成している企業は、すでに有名な大企業です。大企業は、投資家から高く評価されて株価が安定している点はいいのですが、ここからさらに株価が上がる「上昇余地」が少ないと見ることもできます。

ただ、短期の値動きではまだその実力はわかりません。3年、5年と時間がたち、組み入れ銘柄の収益が改善していけば、JPXプライム150指数も右肩上がりで伸びていくものとみられます。

また今後、JPXプライム150指数に連動するインデックス型のETFが誕生すれば、それに投資するだけで稼ぐ力のある優良大型株にまとめて投資できるようになります。投資家からの人気が集まれば、JPXプライム150指数が上昇する、ということもあるかもしれません。

■まとめ


東証が2023年7月より公表を開始したJPXプライム150指数は、東証プライム市場に上場する時価総額の高い500銘柄から、企業の収益性や成長性を基準にした優良大型株150社の銘柄が選ばれています。

東証によれば、JPXプライム150指数をきっかけにして日本企業の「稼ぐ力」=「価値創造」を重視した経営が浸透することを期待しているとのこと。日本企業の稼ぐ力が向上し、株価も上がれば、投資家の利益も増えます。そして、投資家がさらに投資をすれば、日本企業の稼ぐ力が向上するという好循環も期待できます。JPXプライム150指数の今後の動向に注目しておきましょう。

頼藤太希 (株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント

中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計120万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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