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ふるさと納税とは?仕組み・メリット・お得にするポイントをプロが丁寧に解説

ふるさと納税」の名前を聞いたことがない人はおそらくいないでしょう。それくらい多くの人に浸透した制度となります。

ただ一方で、「なんだかよくわからない」「面倒だから」と、ふるさと納税をしていないという人はいるのではないでしょうか。

もし読者のみなさんがそうであれば、なんともったいない!

自己負担2000円で豪華返礼品や日常に役立つ返礼品をもらえる機会を逃していることになります。

今回は、ふるさと納税の仕組みメリット、そしてふるさと納税をお得にするためのポイントを丁寧に解説します。

ふるさと納税とは?ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付をすることができる制度です。寄付をすることで、「寄附金控除」が利用でき、2000円を超えた金額を所得税・住民税から控除できます。

ただし、後述しますが厳密には節税できる制度ではありません

しかし、自己負担2000円で、多くの自治体から返礼品をもらえますので、やらないのはもったいない制度です。実際、年々利用者が増加しています。

<ふるさと納税の受入数・受入件数の推移>

総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」より

2023年度(令和5年度)のふるさと納税受入額は1兆1175億円とはじめて1兆円の大台を突破。受入件数も年々増え、5894万件に達しています。

ふるさと納税の4つのメリット

ふるさと納税のメリットには、次のものがあります。

ふるさと納税のメリット①返礼品をもらえるのがとにかくお得

ふるさと納税の返礼品は実にさまざま。肉・魚・果物・お米・お酒といった地域の特産品が人気ですが、その他にも日用品・化粧品・家電・雑貨など、いろいろあります。ふるさと納税ポータルサイト(特定事業者)を利用すれば、ネットショッピングで買い物をする感覚でふるさと納税ができます。

ふるさと納税の返礼品の金額は「寄付額に対して仕入れ値の30%まで」と決められています。たとえば、5万円の寄付をした場合、最大で1万5000円相当の品がもらえるということです。ふるさと納税の自己負担は実質2000円ですから、差し引き1万3000円のお得ということもできます。ふるさと納税のメリットといえば、この返礼品が筆頭です。

ふるさと納税のメリット②さまざまな地域に寄付ができる

ふるさと納税を利用すれば、自分の住んでいる自治体に限らず、さまざまな地域に寄付ができます。寄付をする自治体の数にも決まりはありません。ふるさと納税をしてもしなくても、納める税金の額は同じです。それであれば、応援したいと思える自治体や、欲しい返礼品のある自治体を選んで寄付をしたほうが、満足度が高まるでしょう。

ふるさと納税のメリット③寄付金の使い道が選べる

自治体のなかには、寄付の使い道を選べるところがあります。具体的には、

・地域活性化

・教育や子育ての支援

・医療・福祉・介護などの充実

・自然保護・環境整備

・災害からの復興支援

などさまざまです。自分が寄付したお金が社会貢献につながっていることを実感できます。

ふるさと納税のメリット④還付・控除が受けられる

ふるさと納税をすると、税金の還付・控除が受けられます。

ふるさと納税の控除額は、具体的には、次の計算式で計算できます。


①所得税からの控除=(ふるさと納税額-2000円)×「所得税の税率」
(総所得金額等の40%が上限)
②住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税額-2000円)×10%
(総所得金額等の30%が上限)
③住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額-2000円)×(100%-10%(基本分) -所得税の税率)
(住民税所得割額の20%が上限)

たとえば、所得税率が10%の人が5万円をふるさと納税したとしたら、
①所得税からの控除=(5万円-2000円)×10%=4800円
②住民税からの控除(基本分)=(5万円-2000円)×10%=4800円
③住民税からの控除(特例分)=(5万円-2000円)×(100%-10%-10%)=3万8400円
合計4万8000円が控除できます。

※2037年までは、①の所得税の税率に復興特別所得税の税率が加えられますが、ここでは省略しています。

ふるさと納税で控除を受けるには、原則として確定申告が必要です。ただ、条件を満たせば確定申告が不要な「ワンストップ特例」も利用可能。この場合は、所得税からの控除はなく、住民税から4万8000円が控除されます。

なお、所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税分は翌年度(6月〜翌年5月)の住民税から控除(住民税の減額)されます。

上述の通り、ふるさと納税の実施の有無で、納める住民税に差はありません。

ふるさと納税をしない場合の住民税」=「ふるさと納税の寄付額+住民税」となり、寄付先に、住民税の一部を預け替えるイメージです。ふるさと納税をしなければ、お住まいの自治体にそのまま住民税を納めるだけです。

ふるさと納税には控除上限がある

ここまで読んで「できるだけたくさんふるさと納税したい」と思われた方もいるかもしれません。しかし、ふるさと納税には、自己負担2000円でできる寄付金額の上限(=ふるさと納税の上限額)があります。

ふるさと納税の上限額は、年収や家族構成により異なります。

<ふるさと納税の上限額目安>

(株)Money&You作成

上限額を超えても、寄付自体はできます。しかし、超えた分は控除できない(=自己負担が増える)ので、自己負担2000円で済む上限額に抑えたほうがお得です。

ふるさと納税をするには?

ふるさと納税をするには、「ふるさとチョイス」「さとふる」「楽天ふるさと納税」といったふるさと納税ポータルサイトを利用するのが便利。返礼品を検索して選べますし、ふるさと納税の手続きもできます。

ここではスマホで「さとふる」を利用したふるさと納税の方法を簡単に紹介します。

<ふるさと納税の手順>

さとふるのWebサイトを元に(株)Money&You作成

①サイトにアクセスし、欲しい返礼品を検索する

②表示された返礼品のなかから、欲しいものを選ぶ

③返礼品の説明を見て問題なければ「カートに入れる」を選択

④カートの内容を確認して「寄付者情報の入力へ進む」を選択

以後は、画面の指示に従って氏名や住所などの寄付者情報、ワンストップ特例制度(次に紹介します)の利用の有無、支払い方法などを入力して手続きすれば、申し込み手続きが完了します。後日、返礼品が届きますので楽しみに待ちましょう。

ただ、これで「ふるさと納税はすべて完了」ではありません。ふるさと納税の寄附金控除を受けるための手続きをしないと、所得税・住民税を控除できませんので、必ず手続きしましょう。

ふるさと納税の寄附金控除を受けるには、確定申告をする方法と、ワンストップ特例を利用する方法があります。

確定申告

確定申告は、1年間に得た所得から収める税額を計算して、国に伝えて納税する手続きです。原則、毎年2月16日〜3月15日の間に、前年1年間分の確定申告を行います。

確定申告をするときには、寄付した自治体から届く「寄附金受領証明書」、または利用したふるさと納税ポータルサイト(特定事業者)が発行する「寄附金控除に関する証明書」が必要。同じサイトでふるさと納税をした場合、寄附金控除に関する証明書には複数の寄付の情報がまとめて記載されるので便利です。

証明書をもとに寄附金控除の欄に金額を記載したうえで、確定申告書を作成して提出します。

e-Taxを利用すれば、スマホやパソコンからでも手続きが可能です。もちろん、確定申告会場などで書類を作成して提出することもできます。

ワンストップ特例

ワンストップ特例は、確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる制度です。会社員や公務員などの場合、確定申告が不要な方も多くいます。そうした方は、ワンストップ特例をしたほうが手間をかけずにふるさと納税を利用できます。

ワンストップ特例の控除を受けるには、寄付した自治体から郵送で届く「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、「マイナンバーカード両面のコピー(またはマイナンバーのわかる書類+身元確認のできる書類のコピー)」を添えて寄付先の自治体に提出します。提出期限は寄付翌年の1月10日(必着)ですので、注意しましょう。

なお、次の方はワンストップ特例を利用できません。確定申告が必要です。

・1年間のふるさと納税の寄付先が6自治体以上(同じ自治体に複数回の寄付をした場合は1自治体と数えます)

・フリーランスや個人事業主

・給与所得以外の所得が20万円超

・医療費控除など、別件で確定申告が必要

・住宅ローン控除の1年目の手続きをする

・年間2000万円以上の給与所得がある

・年間400万円超の年金がある

ワンストップ特例が利用できるのは、ふるさと納税の寄付先の自治体が5自治体までの方です。6自治体以上に寄付した場合には、確定申告が必要です。

そのほかは、ふるさと納税が仮になかったとしても、確定申告が必要です。ふるさと納税でワンストップ特例を利用する手続きをしたとしても、確定申告をするのであれば、ふるさと納税についても確定申告で必ず申請しなければ適用になりません

お得なふるさと納税をさらにお得にする3つのポイント

ふるさと納税をお得にする方法を3つ紹介します。

ふるさと納税をお得にするポイント①ふるさと納税では「日用品」「日持ちする食品」がベター

ふるさと納税の返礼品の中にはブランド肉や豪華な魚介類などもあり、とても人気です。しかし、「生活費を節約する」という観点でふるさと納税を考えると、そうした高級食材はおすすめしません。

生活費の節約という観点での返礼品のおすすめは、日持ちする食品や日用品です。普段使いするものをもらうようにすれば、その分生活費の削減に役立ちます。たとえばティッシュ、トイレットペーパー、水、お米など、必ず使うものをふるさと納税で手に入れれば、その分の支出削減に役立ちます。

さとふるで調べたところ、以下のものが人気になっていました(さとふるのランキングより・2024年11月15日調査時点)

・ティッシュ

栃木県小山市

クラリスボックスティッシュ60箱(1箱220組(440枚))(5個入り×12セット)

寄付金額1万4000円

・トイレットペーパー

静岡県富士市

エコロジープレミアムトイレットペーパーダブル12R×8パック

寄付金額1万2000円

・水

鹿児島県垂水市

天然アルカリ温泉水 財寶温泉 500ml×25本×2箱

寄付金額1万1000円

・お米

茨城県八千代市

茨城県産コシヒカリ10kg(5kg×2袋)

寄付金額1万6000円

ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどは、数か月は買わずに済む量が届きます。それだけ、節約ができるということです。また、水やお米などは重くてかさばりますので、家まで届けてくれるのもありがたいですね。2024年はお米の品薄感・値上がりが話題になったこともあり、ふるさと納税でお米を手に入れる人が増えているという報道もあります。

もちろん、楽しみのために高級食材を選ぶのも手ではあります。バランスを見て、ふるさと納税をご活用ください。

ふるさと納税をお得にするポイント②12月の「かけこみ納税」に要注意

ふるさと納税は、年末に行われるケースが多いようです。年の瀬になるとふるさと納税のCMをよく見かけるのは、年内のうちに手続きをすればその年の寄附金控除の手続きに間に合うからです。

ただし、年末にまとめてふるさと納税をすると、次のような問題が生じる可能性があります。

・返礼品を無駄にしやすい

年末にまとめてふるさと納税をすると、たくさんの返礼品が一度に届く可能性があります。食べきれなかったり、置き場所に困ったりするハメになるかもしれません。

・返礼品選びに妥協しやすい

年末にふるさと納税をするといっても、商品選びにかけられる時間には限りがあります。上限額まで利用しようという気持ちが先に立つと、「この商品でもいいか」と、返礼品選びに妥協してしまうかもしれません。せっかくの返礼品なのに、これではもったいないですね。

・先にお金を支払う必要がある

ふるさと納税をすることで後から所得税・住民税の控除が受けられるとはいえ、先にふるさと納税の寄付金を支払う必要があります。12月にクレカでふるさと納税をしたとすると、翌年1月の支出が大きく増えてしまいます。

・ポイント還元率アップキャンペーンを逃す

ふるさと納税ポータルサイトの多くでは、寄付することでポイント還元が受けられます(ただし、後述しますが2025年9月まで)。なかには、期間限定でポイント還元率アップキャンペーンを開催しているところもあります。

欲しい返礼品をあらかじめ決めておき、そのキャンペーン中に寄付をしておけば、ポイントももらえてダブルでお得です。年末になって慌ててふるさと納税をすると、そうしたポイント還元率アップキャンペーンを逃してしまう可能性があります。

ふるさと納税の時期としておすすめなのは、「欲しい返礼品が手に入るタイミング」です。ふるさと納税の返礼品の中には、季節限定のものや旬のものが結構あります。春夏秋冬、その時期の季節の品を申し込むことで、返礼品の満足度もアップします。

たとえば、11月で受付が終了する返礼品のひとつに「えひめみかん4kg・華まどんな1kg詰め合わせ」(愛媛県八幡浜市・寄付金額1万3000円)があります。「華まどんな」は愛媛県内でしか栽培されておらず、12月からの1か月ほどしか収穫できない、とても貴重なみかんなのだそうです。それに愛媛県産のみかんを加えて送ってくれる…というのですが、年末にふるさと納税をするようではそもそも申し込めません。11月に申し込んでおけば、年末年始においしい思いができそうです。

なにより、ふるさと納税をする時期を分散すると、返礼品が届く時期も分散できますので、返礼品を無駄にしてしまうことや、一度に多額のお金を支払うことを防げます。前述のポイント還元率アップキャンペーンを実施しているタイミングなら、よりお得にできます。

ふるさと納税をお得にするポイント③2025年は9月末までに行うのがおすすめ

ふるさと納税ポータルサイトは、ポイント還元でサービスを競っていました。しかし2024年、総務省は「2025年10月以降、ポイント付与を行うサイトを介したふるさと納税を禁止する」ことを発表しました。またこれに先立って、2024年10月からはふるさと納税ポータルサイトなどが返礼品を強調した宣伝をすることも禁止されました。

2025年10月からは、ふるさと納税ポータルサイトでふるさと納税をしても、ポイントが得られなくなります。ただ言い換えれば、2025年9月末まではポイントを得ることができるのですから、9月末までにふるさと納税をするのがベターです。

ふるさと納税ポータルサイトのなかには、8月や9月に最後のポイント大盤振る舞いキャンペーンを実施するところもあるかもしれません。お得なタイミングでふるさと納税をするのがベターです。

応援したい自治体に寄付ができて、お得な返礼品がもらえるふるさと納税は、ぜひ多くの方に使っていただきたい制度です。

使ったことがないのであれば、ぜひ今年から取り組んでいただければと思います。

頼藤 太希(よりふじ・たいき) マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)など書籍100冊、著書累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧twitter)→@yorifujitaiki

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