物価上昇とマンション投資の関係【プロが教える不動産投資コラム】
今回のコラムでは最近よく耳にする物価上昇が私達の生活、さらに不動産購入などにどのような影響が及ぶのかを検証してみたいと思います。
日本では過去にも物価上昇が発生
過去の日本経済の流れを見てみると、インフレやデフレが様々なシチュエーションで起きてきたことがわかります。
例えば昭和48年(1973年)においては第一次オイルショックが起きトイレットペーパーなどの生活必需品がスーパーで奪い合いになったりする事態も発生しました。物価も大きく上昇しまさに「狂乱物価」と言われた時代でした。物価は昭和48年には15.6%、翌年の49年にはなんと20%も上がりました。
意外な感じがするのは1980年代後半のいわゆる不動産価格などが大幅に上昇したバブル時代ですが、そのバブル時代においては実は物価はさほど上がっていなかったのです。
例えば昭和63年で0.8%、平成元年で2.9%とバブルの割には物価が上がらなかった理由として、バブルはまさに株価と不動産という極めて限定的な対象だけが上がったからです。バブル崩壊後はデフレが続き、平成の時代は一時期を除きほぼデフレとなっていました。
しかし令和に入ってから少しずつ物の値段も上昇してきています。
物の値段がステルス値上げから大幅値上げに
近年は価格は同じで内容を減らすといった「ステルス値上げ」といった現象をよく耳にしましたが、最近ではすでにステルスではない値上げも多くなってきています。
身近な所では食品や電気、ガス代などの価格が上昇となっています。 価格の安い象徴とも言える吉野家の牛丼は2021年10月に387円から426円に値上げとなり、松屋やすき屋なども相次いで値上げとなりました。
さらに低価格で子どもたちに人気の「うまい棒」は10円から12円に値上げとなり、1979年以来初の値上げとなります。
ガソリン価格も大幅に上昇
また生活や運輸などにも必需品となるガソリンの価格が上昇しています。
経済産業省の発表によると、レギュラーガソリン1リットル当たりの平均小売価格が上昇し20都府県で170円を超え、さらに180円に迫る地域も出ているとの事です。リーマンショックの頃にもガソリン価格が急上昇しましたが、それ以来の13年ぶりの高値となっています。
政府は元売り会社へ補助金を出すなどの高騰抑制策を打ち出していますが、実効性については不確定な部分もあります。
企業物価の上昇が過去最大に
日銀が発表した2021年の国内企業物価指数は前年比で4.8%上昇し、過去最大の伸びとなりました。 帝国データバンクの調べによると、前年同月から仕入れ値が上昇した企業は6割を超えているとの事です。
しかし仕入れコストが上昇しても価格に転嫁する事が難しい状態が続いてきましたが、今後は価格上昇の圧力が徐々に高まっていくと考えられます。
欧米でも物価が急上昇
最近では米国の消費者物価の上昇ぶりには目を見張るものがあります。米国の2021年12月の消費者物価指数は前年同月比7%も上昇し、39年半ぶりの高い水準になりました。
この要因としては新型コロナの経済的な影響が米国では他の国よりも早く収束し、むしろ新型コロナにより住宅需要などが大幅に伸び、それにつれて生活関連の消費需要も大きく伸びました。
その背景には米国における好調な雇用状況が挙げられます。雇用の需要が高まり、賃金も大幅に上昇していますので、この状況はしばらく続く可能性を帯びています。
また英国では公共料金の大幅な値上げなどもあり、2021年11月の消費者物価指数は前年同月比で5.1%上昇しました。その他EU(ヨーロッパ連合)でも物価上昇が進んでおり、ドイツなどでも物価上昇率が5%を超えているそうです。
このように世界的にもインフレが進行している状況となっています。
物価上昇の要因と今後の予想
物価上昇は様々な要因が複合的に発生しますが、主な理由としては世界的にコロナ禍からの経済回復の中で消費需要の拡大から、人手不足や資源不足により「輸送費」の上昇や「資源価格」の上昇などが発生している事が考えられます。
また国内的には円安による輸入物価の上昇が発生しており、2021年の輸入物価指数は前年比22.7%と過去最大の上昇となっています。
こうした企業物価、消費者物価の上昇から、今後も物価が大きく上昇すると考える方も多くなっています。
日銀の発表した2021年12月のアンケート調査によると、1年後の物価上昇率の平均は5.5%となりました。9月調査から1.2ポイント上昇しています。1年後の物価が上昇するとした方が78.8%となり、多くの方が先行きの物価上昇を感じている結果となっています。
マンション価格への影響は?
こうした物価の上昇は、建築費などにも影響を与えています。
国土交通省の発表した「建設工事費デフレーター」によると2021年12月の建築費は2015年を100とする指数で114.7にまで上昇しています。特に一般のマンションの構造であるSRC・RC造の建築費が上昇しています。
日銀の発表した企業物価指数のうち、2021年12月の速報では「鉄鋼」の価格指数は2015年を100とする指数で137.8まで上昇しています。
またワンルームマンションなどはこのような価格上昇・コスト上昇の影響は現在受けている事は確かですが、今後はさらにその影響が出てくる可能性も秘めています。
物価上昇の反面、賃料も上昇すればマンション経営も安定
新型コロナのオミクロン株もピークアウトを迎えた国もあります。米英などではオミクロン株の流行がピークに達し、減少に転じています。
日本でも楽観はできませんが、早くピークアウトを迎えたいものです。
今後新型コロナの収束次第では、さらに多くの分野で需要が増大し物価上昇に拍車がかかる可能性もあります。
物価上昇の影響をそれほど受けないうちにマンション投資を始める事も将来のためには良い選択肢のひとつと言えるのではないでしょうか。