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建築素材の値上げが不動産投資市場に与える影響は?【プロが教える不動産投資コラム】

近年マンション価格は上昇傾向にありますが、今後の価格動向についても気になる方も多いかと思います。マンション価格は多くの要素により構成されていますが、その中でも「建築費」が占める割合は比較的大きくなります。近年様々な要因によって建築資材価格が上昇しています。

こうした建築資材価格の上昇とマンション価格との関係、そして今後の不動産投資市場について考察してみたいと思います。

世界的に資材価格の上昇が続いています

建築資材の上昇の影響は不動産業界のみならず、多くの産業にも影響が及んでいます。例えば2022年9月に入ってすぐにトヨタ自動車と日本製鉄の間で車用の鋼材を大きく引き上げるというニュースが新聞やインターネットなどでも報道されました。またガラスなどの価格が最大40%も上昇するという報道されています。

今、世界的に電気・ガス・ガソリンなどのエネルギー価格も上昇が続いています。鉄鋼などは製造に多くのエネルギーを使用しますので、こうしたエネルギー価格上昇の影響を受けやすいと言えます。また鉄鋼だけではくセメント・ガラスなども製造の過程で多くのエネルギーを使用します。

このようにマンションの建設材料となる素材は製造過程で多くのエネルギーを使用しているため、エネルギー価格上昇の影響を受けやすいと言えます。

エネルギー多消費産業における主なエネルギーの用途

業種主なエネルギー用途
鉄鋼業コークスの製造
銑鉄製造時の高温処理
電気炉での還元精錬
圧延時の再加熱 等
窯業・土石セメントクリンカ製造における石灰石の焼成
セメント素材の粉砕
板ガラス原料の溶融 等
<経済産業省資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2022)」より作成>

建築資材の価格上昇要因は?

世界的なエネルギー価格上昇の要因は、一つにもウクライナ情勢があります。エネルギーや食糧の価格上昇から世界的なインフレも加速しています。また中国では大規模な干ばつなども発生しており、今後食料の需要も高くなる可能性もあります。

木材の不足による「ウッドショック」も2021年頃から発生しています。これは新型コロナの影響もあり世界的に木材の需給ギャップから木材価格が大きく上昇した現象です。さらに鋼材の値上がりによる「スチールショック」も発生しています。

これらの要因に加えて国内的には「円安」が進行しており、輸入資材の調達価格が大きく上昇しています。上昇傾向にある資材価格が円安によってさらに上昇しており、建築資材の価格が大きく上昇しています。

日銀が発表した企業物価指数によると、2020年を100とする指数で見ると、2022年7月(速報)では「鉄鋼」は142.9と上昇していますが、「木材・木製品」価格はさらに177.2と大きく上昇しています。セメント・ガラスなどが含まれる「窯業・土石製品」が106.3に対して、木材・金属などの価格が大きく上昇している事が分かります。

国内企業物価指数(2022年7月速報)

項目指数(速報)
木材・木製品174.6
鉄鋼146.5
窯業・土石製品106.3
<日本銀行「企業物価指数(2022年7月速報)」より作成>

マンション価格の構成要素は

こうした建築素材の価格はマンション価格にも影響を与えます。マンションの価格構成の中で特に大きい割合を占めるのは「建築費・土地価格」です。また建築費の中でも「資材価格」だけではく「人件費」なども大きな要因となります。

人件費も上昇しており、国土交通省が発表した「公共工事設計労務単価」は2013年度の15,175円から2022年3月以降は21,084円と推移しています。国土交通省の「建設工事費デフレーター」によると、マンション(RC=鉄筋コンクリート造)の建築価格指数は2015年を100とすると2022年6月には123.4にまで上昇しています。2010年には94.2でしたので、実に30ポイント近く上昇している事になります。

マンション価格はこうした様々な「建築費」に加え、さらに立地や需要、そして投資用マンションでしたら賃料設定や利回り、設備・仕様など様々な観点を総合して販売価格が決定されます。つまり同じ広さ・仕様のマンションでも立地や発売時期などによって大きく価格が異なる場合もある訳です。

建設人件費の推移(公共工事設計労務単価の推移)

2013年度2022年3月〜
全職種平均・日額15,175円21,084円
<国土交通省「令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について」より作成>

建設工事費指数の推移(2015年=100)/ マンションRC

年度/月指数
2010年度94.2
2015年度100.0
2016年度100.2
2017年度102.5
2018年度106.2
2019年度※108.6
2020年度※108.3
2021年度※114.2
2022年1月116.6
2022年2月117.4
2022年3月119.6
2022年4月119.3
2022年5月118.8
2022年6月123.4
2015年=100 ※:暫定値
<国土交通省「建設工事費デフレーター」より作成>

マンション価格指数の動向

建築費の上昇に加えて、東京などででは新型コロナの影響で一時的に調整局面となった地価も反転の兆しを見せ、地価は現在高止まりを見せています。

こうした状況もあり国土交通省の発表した「不動産価格指数」によると、全国のマンション価格(RC=鉄筋コンクリート造)は2010年を100とする指数では、2022年5月にはなんと182.6にまで上昇しています。

今後さらに建築費の上昇がそのまま価格にされるかどうかは、今後の売れ行きや不動産市場動向、税制や金利などにも大きく関係してきます。

しかし今後景気が順調に回復に向かえば、マンション価格も価格上昇圧力がさらに高まってくると考えられます。

マンションの価格指数の推移

2021年5月2022年3月2022年4月2022年5月
マンション
(区分所有)
163.7177.9179.5182.6
季節調整値、2010年=100
<国土交通省「不動産価格指数」より作成>

価格上昇圧力が高まる中、今がワンルームマンションの買い時か?

建築素材の上昇は今後発売される投資用マンションの価格に影響を与える可能性があります。しかしワンルームマンションを購入してしまえば、今後発売されるマンション価格が上昇しても影響は受けづらく、逆に自分の不動産の資産価値の上昇につながる場合もあります。東京の将来性も高く好立地のマンション資産価値の大きな下落の可能性は低いと言えます。

マンション賃料もインフレの影響もあり上昇傾向にあります。マンション経営は、賃貸契約も2年契約が多いので一旦入居者が決まればその後は外的要因の影響を受けづらいと言えます。つまり安定した収益が見込まれるという事です。

今後も投資マンションの価格上昇圧力が強くなってきている中、早めの購入がマンション経営の成功に結び付く可能性も高いと言えるのではないでしょうか。

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