今上がっている物と今後上がる物【プロが教える不動産投資コラム】
日本経済にはデフレ脱却に向かって様々な転機が訪れています。国内では消費者物価指数を始め多くの指標において上昇がみられます。上がって欲しい物としては「岸田政権の内閣支持率」がありますが、これは残念ながら下がっているようです。
今回のコラムでは「今上がっているもの」と「今後上がると予想される物」をピックアップして、経済の行方や不動産投資について考えてみたいと思います。
今上がっているものは?
1、日経平均株価
天高く上がる物として「ロケット」が思い浮かびます。2024年2月17日には新型主力ロケット「H3」2号機の打ち上げに成功しました。今後は日本の宇宙開発も進むのではないでしょうか。
さらに今上がっているものとして最も注目を集めているのは「日経平均株価」ではないでしょうか。日経平均株価はバブル期の1989年に3万8915円(終値)と過去最高となりました。
2024年には株価も上昇傾向が続き、2月22日の終値は過去最高値を上回り、さらに2月26日、27日にも最高値を更新しています。まさに株価はロケットのように急上昇しています。
新型コロナが5類に移行してからまだ1年も経っていませんが、日本経済は着実に回復してきている様子が見られます。
2、地球温暖化による気候変動
まだ寒い日が続いていますが、実は世界気象機関(WMO)の発表によると2023年の世界平均気温は観測史上最高となり、地球温暖化が進んでいる事が分かります。気候変動と太平洋東側の海水温度が上昇する「エルニーニョ現象」が要因とされており2024年は更なる気温の上昇も予想されています。
気候温暖化を防ぐために温室効果ガスの排出を抑える「カーボンニュートラル」、「ゼロエミッション」などの目標も掲げられています。こうした動きはマンションにも取り入れられ、今後省エネ効果の高い「ZEH(ゼッチ)マンション」なども増えると考えられます。
3、金価格
世界的なパンデミックである新型コロナや世界的なインフレ、さらにウクライナやイスラエルなどの紛争も続いており世界情勢は不安定な状態が続いています。
こうした際には現物資産である「金」の需要が高くなり価格も上昇、史上最高値を更新しています。通貨はインフレやハイパーインフレによってその価値が下がる事がありますが、金は常に一定の価値を有しており、有事の際には価格が上昇する傾向もあります。
「不動産」なども同様にインフレに強い資産と考えられます。
4、消費者物価
私たちの身近な日常品や食料品、光熱費なども上昇しています。総務省の発表した2024年1月の消費者物価(総合)は前年同月比2.2%の上昇となりました。日銀の植田総裁は国会の質疑の中で現在はインフレが継続している事を明言しています。
また円安による輸入物価の上昇も続いており、2024年1月には国内の企業物価は2020年を100とする指数で120.1に上昇しています。
今後も景気回復とともにさらに物価が上昇する可能性があり、「将来の備え」についても関心が高まってきています。
5、国産ウイスキー・高級時計
身近な物だけでなく高額商品も価格が上がっています。
筆者の事務所の近くには中野ブロードウェイがありますが、高級中古時計店が多くあり何百万円もする時計も多く販売されています。これらは人気も高く海外からも多くの人が買いにくるようです。
また日本製のウイスキーなど価格も上昇しています。こうした高額商品は「消費」するものではなく「投資」として購入する人が増えている事も要因と考えられます。
インフレ時には購入能力も高まり高額商品の人気も高まりますが、その代表としてはやはり「住宅」が挙げられます。マンションなども高い需要が続くのではないでしょうか。
6、地価・ファミリーマンション価格
地価は都心部を中心に上昇が続いています。新型コロナの影響で一時停滞していた地価も上昇傾向となり、2023年の基準地価では東京都区部の商業地は平均で5.1%の上昇となりました。
地価の上昇に加えて建築費なども上昇している事から新規発売ファミリーマンションの価格も上昇してきています。2021年から2022年にかけて東京都区部の平均価格は8,000万円台で推移していきましたが、2023年には1億円を超えるなど高額化が進んでいます。
しかし投資用マンションにおいては、その販売価格は主に賃料と利回りなどの収益還元法から決まる事が多く、一部の都心部のワンルームマンションなどを除いては価格の上昇はファミリーマンションと比較して緩やかなものになっています。
基準地価 商業地の地価変動率の推移
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
東京都 | 1.4% | △0.3% | 2.0% | 4.6% |
東京都区部 | 1.8% | △0.3% | 2.2% | 5.1% |
区部都心部 | 1.9% | △0.9% | 1.5% | 5.0% |
新規発売ファミリーマンション価格の推移
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
東京都区部 | 7,712万円 | 8,293万円 | 8,236万円 | 1億1,483万円 |
首都圏 | 6,083万円 | 6,260万円 | 6,288万円 | 8,101万円 |
今後上がると予想されるもの
1、賃金水準と賃料
では今後上がっていくと予想されるものとして「賃金」が挙げられるのではないでしょうか。賃金水準も上がってきましたが物価上昇が賃金の上昇を上回り実質的にはマイナスとなっています。
岸田総理の呼びかけもあり賃金上昇の圧力も高まっています。2024年の春闘では過去最高となる要求を発表している業界等も多く、また政府の後押しである「官製春闘」と言われている事や、さらに株価上昇なども賃金アップを後押しすると考えられます。
賃金水準上昇の流れにより消費が上向き、景気の活性化につながる可能性があります。またマンションなどの住宅購入力も高まりますので、低金利である事もありマンションの需要もますます高まる可能性もあります。
さらに賃貸住宅の賃料の値上げの素地ともなり、今後のマンション賃料の上昇へとつながる事も考えられます。
2、金利
現在、日銀では大規模金融緩和、すなわち低金利政策が取られていますので、ローン金利なども史上最低水準が続いています。日銀では金融緩和の終了の条件として安定的な物価上昇を上げており、物価安定目標として消費者物価の前年2%の上昇と定めています。
現在消費者物価は2%超えが続いており金利上昇の条件も満たしてきていますが実質賃金はマイナスとなっている状況です。そのため今後賃金相場が上昇し実質賃金がプラスに転じれば金融緩和の終了⇒金利上昇の可能性も高くなってきています。
但し急激な金利上昇は日本経済の腰折れとなる可能性もあり、金利上昇は行われるとしても緩やかなものになると予想されます。
3、国民負担率
少子高齢化が進み税負担や社会保険料などの国民負担率が増加していきています。財務省が発表した2023年の国民負担率(租税負担率と社会保障負担率の合計)は、対GDP比で46.8%となっています。
対前年比では若干縮小となっていますが、これは所得の向上が進んでいる事も要因であり、今後も年金などの財政も厳しさを増していく事が予想されます。
長期金利上昇の影響で国債の利息負担額が増加しており、さらに今後の引き上げが行われれば国家財政も厳しさを増してきます。2024年度の予算案では社会保障の支出は37兆円ですが国債の償還や利払いなど「国債費」は27兆円になっています。
国家予算の4分の1が借金の返済であり、金利上昇により今後さらに国債費が増加すれば年金財政なども一層厳しさを増す可能性もあります。
まとめ
以上ように上がる物をいくつかピックアップしてみましたが、やはり今後もインフレが続き、医療費や光熱費など多くの物が上がる事も予想されます。将来の暮らしについても金利上昇で年金財政も厳しくなる事も予想され、今後ますます「自助努力」が必要となってくるのではないでしょうか。
物価が上がると、逆に「現金の価値」は下がって行きますので、現物資産の人気もますます高まる可能性があります。
不動産業界では地価・建築費・マンション価格などが上がっていきますが、今後は賃料水準も上がる可能性もあります。しかしこうした物価の恩恵を受けられる不動産は立地や建物の質などの一定の条件を備える必要があり、今後の不動産の選択もより厳しい視点が求められてきます。