不動産投資市場はこの8年間でどう変わったのか|300回コラム総括
不動産投資を始めるにあたり、今の市場をどう捉えればいいか迷っていませんか。本コラムは2018年の連載開始から300回を迎え、平成から令和へ、アベノミクスからコロナ、そして高市政権下のインフレ・利上げまで、8年間の経済・不動産投資市場の変化を見つめてきました。金利や株価、東京の再開発が同時に動く今、断片的なニュースだけでは将来を判断する軸を持ちにくいのが実情です。本記事では300回分のコラムを時系列で振り返り、変化の全体像から自分なりの判断軸を得るための視点を整理します。
2018年、なぜ不動産投資は「アベノミクス相場」で伸びたのか
第1回目のコラムは2018年5月、年号も「平成」の時代にスタートしました。あれから約8年の歳月を経たことになります。過去のコラムのタイトルを振り返ってみると、その内容から改めて様々な事象があったことが分かります。
まず2018年にはまだ安倍内閣によるアベノミクスが継続されていました。金利については当時アベノミクスの「大胆な金融緩和」が推進されており、政策金利はマイナス金利となっていました。またトランプ大統領が第1期目の就任時期で、中国との関税の応酬が始まった年でもあります。
アベノミクスを受けて日経平均株価も上昇しつつあり、コラムではこれからの時代の賢い分散投資法ということで、当時巨人軍の岡本選手を投資の四番バッターに置き換えて、投資信託や金・ビットコイン、仮想通貨などの中で、長期安定に応えられる不動産投資を推奨いたしました。その後2018年以降、現在に至るまで経済成長・インフレ・低金利の継続を背景に、不動産投資市場は好調に推移しています。
この年のコラムではインバウンドに触れましたが、2018年のインバウンドは3,119万人でしたが、2025年にはなんと4,268万人まで増加しました。
当時巷では東京五輪の後に建築費は下がると言われていましたが、筆者は否定的見解でした。実際に現在も建築費は大きく上昇しています。
さらに高輪ゲートウェイの開業が不動産市場に与える影響などにも触れており、東京では再開発が進んでいたことが分かります。
令和元年、消費税10%と地価公示50周年は不動産投資に何を残したか
2019年は令和元年という記念すべき年となりました。また消費税が8%から10%に引き上げられました。
この年は地価公示制度の50周年の節目の年でもあり、地価に関するレポートも何度か執筆させていただきました。やはり駅に近い商業地の資産性・希少性は2026年の現在においても根強いものがあります。
また海外からの東京への不動産投資が加速した年でもあり、東京には海外から人・企業・投資マネーの流入がますます増加した年でもありました。
2020年にはマンション投資において、妥協する点と妥協してはいけない点について述べさせていただきました。要約すると、立地にはある程度こだわっていただき、部屋の向きや階数・面積などは多少大目に見る「度量」が必要であるということです。
コロナ禍でも不動産投資の需要が増したのはなぜか【2020年】
2020年はまさに新型コロナの渦中にあり、日本でも緊急事態宣言が発令されました。
2020年の東京五輪は新型コロナのため翌年に延期となりましたが、こうした中でも東京都内を中心に再開発が力強く加速し特に渋谷駅周辺などは大きな変貌を遂げました。
新型コロナの状態でも不動産投資は着実に需要が増した時期でもありました。当時のコラムでは新型コロナが地価や不動産市場に与える影響は軽微であると述べさせていただきましたが、今やそれがより顕在化していると言えます。
またこの年は菅新政権が発足し新たな経済対策が発表され、より不動産市場が活性化しました。2020年からは多くの企業で副業を容認する時代となりマンション投資も広い意味で副業ととらえるべきというコラムも執筆させていただきました。
2021年のインフレ加速は不動産投資にどう影響したか
2021年は新型コロナによるサプライチェーンの混乱により世界的なインフレが加速しました。国内においても手取り減少、株価上昇、円安など大きな変動があった年です。
コラムではインフレの兆候と不動産投資の相関関係について述べましたが、現在なおインフレについては、国民が多くの関心を寄せ、2026年現在でも高市政権における重要な政策課題になっています。
手取り減少を第二の所得、不動産投資でいかにカバーするか、さらに株価上昇、円安が中期に渡って不動産投資市場特に東京首都圏の駅近マンションに与える影響についても触れています。
東京の発展も進み、東京における新線計画、とりわけ地下鉄の延伸計画(東京メトロ有楽町線や南北線など)などについても執筆させていただきました。
32年ぶりの円安水準となった2022年、不動産投資はどう動いたか
この年はロシアのウクライナ侵攻が始まり、世界的なインフレや歴史的な円安となりました。1ドル150円を突破しバブル期の1990年8月以来、約32年ぶりの円安水準となりましたが、2026年8月現在においても依然160円前後と円安が続いています。
この年には個人の投資家だけではなく企業における賃貸経営の参入がとても多くなり、個人及び法人についての不動産投資について述べさせていただきました。
この頃から幅広い世代における資産形成が意識され始め、特にその年の4月から高校における資産形成の授業が始まり若い20代の方々の投資意欲が増してきた時代でもありました。それが現在のNISAやiDeCoといった資産運用への関心が高まったきっかけの一つとも言えます。それらについての着眼点及び注意点についても触れています。
また「男女共同参画白書」が発表され、単身者の婚姻状況や今後求められる住居のスタイルなどにより「コンパクトな住宅の需要が拡大していく」ということについて触れています。あれから4年が経過し単身者の割合やワンルームマンション・コンパクトマンションの需要はますます高まりつつあります。
再開発においては、筆者のオフィスのある中野エリアの再開発についてレポートさせていただきましたが、当時の南口中心の再開発から現在においては北口、特に三井不動産中心に駅前再開発が加速しており、当時から思うと想像を超える進化に驚くばかりです。
新築マンション価格が1億円を超えた2023年、不動産投資の二極化とは
2023年には猛威をふるった新型コロナも落ち着きを見せ5類へと移行しました。コロナ5類移行で不動産市場がどう変わるかについても述べさせていただきました。
またこの頃からより社会問題化しつつあった「空き家住宅」の今後の課題と問題点、つまり日本の住宅においては確かに数という点では充足されていますが、耐震性や安全性、セキュリティ、スペックなどのクオリティという観点から見ると依然足りてないということなどに触れました。
空き家住宅が増える一方で2023年には東京都区部の新築マンション価格が平均で1億円を超えました。住宅価格はまさに二極化が進む時代となってきました。
また将来の備えとして、レバレッジを活かした資産活用法、とりわけ20代30代といった若くて所得が伸びやすい年代においては金融機関から不動産投資融資を受けられるという「信用力」を活用して不動産投資の量を増やしていくという戦略についても触れています。
マイナス金利解除の2024年、不動産投資への影響を振り返る
2024年は元旦から能登半島で大きな地震があり、また羽田で衝突事故が発生するなど大変な幕開けとなりました。
経済面では株価の上昇が続き、不動産市場への影響も大きくなってきた時期です。
また長らく続いてきた金融緩和の中で、マイナス金利解除という日銀の金融政策の転換期でもありました。
人口面では今後の日本における少子高齢化、人口減の中で東京の潜在能力がいかに開花していくのか、他府県との違いはいったい何なのか、というところについても述べさせていただきました。
またワンルームマンションなどの賃料上昇が顕在化してきた年でもあります。但し賃料が上がる場所、横ばいの場所、景気が回復しても逆に下がる場所など、地域による違いなどについても触れています。
東京駅・八重洲の再開発が進んだ2025年、不動産投資の注目エリアとは
2025年にはトランプ大統領が第2期目の就任となり、関税政策で世界経済も混乱となりました。インフレも進み、特にお米の価格が大きく上昇し私達の生活にも大きな影響を与えました。
再開発エリアとして特に東京駅・八重洲エリアの発展が著しく、今後期待される「羽田空港」と「東京」駅を結ぶ「羽田空港アクセス線」についての将来性についても述べさせていただきました。また東京駅だけではなく、「品川」「大井町」など東京サウスエリア・グレイト品川の将来性、「原宿・青山・神宮外苑」などについて触れています。
大阪では「大阪・関西万博」が開催され2,557万人が来場しました。東京五輪に続く世界的なイベントであり、大阪の知名度も上昇したのではないでしょうか。
2025年10月には高市新政権が発足し、今後の経済を中心とした政策に大きな注目が集まりました。株価も10月27日には史上初の5万円台となりました。金利面では日銀による政策金利は徐々に上昇を続け、2026年6月にはついに1%に引き上げられました。こうした利上げの影響についても触れていますが、現在でも高市政権では基本的にアベノミクスを継承しており金融緩和政策は続いています。
また海外転勤の方も多いとのことで、「不動産投資をしていて海外転勤になったら」というコラムも執筆させていただきました。
株価7万円台の2026年、不動産投資市場はどこへ向かうのか
コラム連載を開始した2018年の日経平均株価の年末終値は約2万円でしたが、2026年には一時7万円台まで上昇し日本経済の力強さに驚かされます。IT、特にAIが世界経済や株価に与える影響がますます大きくなってきています。
公示地価では、東京都区部の地価はアベノミクス発足後にマイナスからプラスに転じ、コロナ期に一時調整局面があったものの2026年も依然上昇が続いています。建築費や地価の上昇は投資用マンションに与える影響も大きく、新規発売立地が東京都心部から周辺に移行する傾向も強くなっています。特に横浜や川崎などの利便性の高いエリアの人気が高まっていることなどにも触れています。
世界情勢では2026年2月の米国とイランの紛争によりホルムズ海峡が閉鎖され、原油不足や「ナフサ」不足がクローズアップされ、物価高と不動産投資についても触れました。
インフレや将来不安も強くなり「これからの資産運用の考え方」「格差社会と資産形成」など将来を見据えたコラムも執筆させていただきました。
また2026年に発表された「令和7年国勢調査」によると、全国の都道府県で人口が増加しているのは東京都と沖縄県のみとなりました。特に東京の人口増加数は大きく東京一極集中が進んでいることが分かります。将来的にも東京及び周辺は不動産投資の立地としても適していると考えられます。
300回の総括からみる、不動産投資の判断軸とは
以上かなり簡単にですが過去のコラムを振り返ってみました。経済や不動産市場の動きを見ても新型コロナを挟んで大きく変わってきていることが分かります。インフレ、金利の引き上げ、株価の上昇、不動産価格の上昇、東京の人口の増加など、不動産投資は新たな局面に突入していることが分かります。
株価や地価の上昇、人口の増加、再開発などは不動産の価格を引き上げ資産価値を高める効果もあります。不動産市場は今、好立地の不動産を中心に上昇の波に乗っていると言えます。好立地・高品質の投資用マンションは資産寿命も長く、今後も人生100年時代にふさわしい優良な投資先となるのではないでしょうか。
参考リンク:
- 日本銀行:金融政策(政策金利・金融政策決定会合の発表資料)
- 国土交通省:不動産情報ライブラリ(地価公示・公示地価データ)
- 日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計(訪日外国人旅行者数データ)
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8年間の変化を振り返った先には、次に押さえておきたい判断軸があります。データや制度の観点から、もう一歩踏み込んで確認してみましょう。
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執筆:野中 清志(のなか きよし)
住宅コンサルタント|株式会社オフィス野中 代表取締役
マンションデベロッパーでの実務経験を経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。特定の企業に属さない第三者的な立場から、首都圏・関西をはじめ全国各地でマンション購入に関する講演・コンサルティングを行う。
居住用マンションから不動産投資(資産運用)向けセミナーまで、年間100本近い講演をこなす「マンション選びの第一人者」。膨大な供給データと開発現場への深い知見に基づいた、先見性の高い解説に定評がある。