変動金利と固定金利どっちが得?住宅ローン利上げの影響をFPが解説
日銀の利上げを受け、住宅ローンの金利が上昇しています。住宅ローンをこれから利用する人はもちろん、すでに利用している人も、利上げによって支出が増えることになるのは悩みの種でしょう。
今回は、政策金利が1%上がると家計や住宅ローンにどのような影響があるのかを確認したうえで、住宅ローンの変動金利・固定金利はそれぞれどんな人に向いているのかを紹介します。
住宅ローンの変動金利はなぜ上がる?政策金利との関係
預金や住宅ローンの金利の元となる金利を「政策金利」といいます。政策金利は各国の中央銀行、日本の場合は日銀(日本銀行)が決めています。
日本は長らく「マイナス金利政策」をとってきました。日本のマイナス金利政策は、日本の中央銀行、日銀が民間の金融機関から預かる預金にマイナス金利をつける政策です。企業や個人がお金を借りやすい状態を作り、景気回復を目指してきました。
物価上昇が鮮明になり、給与水準も上昇し、安定した経済環境になってきたと判断されたことから、日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除することを決定。その後も政策金利はたびたび引き上げ(利上げ)が行われ、本稿執筆時点(2026年8月17日)の政策金利は1.0%となっています。
<政策金利の推移>

(株)Money&You作成
日銀の利上げは、日本銀行が金融政策の一環として、市場の短期金利(政策金利)を引き上げることです。政策金利が引き上げられると、銀行の預金金利や個人向け国債の金利などが上昇します。一方で、住宅ローンの金利も上昇します。
政策金利が上がるということは、銀行がお金を仕入れるコストが上がるということです。銀行がお金を仕入れるコストが上がると、そのお金を貸す際のコストも上がります。こうして、住宅ローンの金利上昇につながります。住宅ローンの金利が上昇すれば、住宅ローンの返済額の増加に直結します。
日銀は年に8回実施する金融政策決定会合で政策金利の水準を話し合って決定します。
今後利上げがいつ行われるか、政策金利がどこまで上がるかはわかりません。ただ、2026年7月に実施された金融政策決定会合の参加者の意見が読める「主な意見」には「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当」「利上げのペースが市場の想定より早まることも考えられる」などの文言が並んでいます。今後も利上げが実施される可能性は高いといえるでしょう。
変動金利と固定金利の違いとは?5年ルール・125%ルールも解説
住宅ローンの金利タイプには大きくわけて変動金利と固定金利があります。変動金利は借りたあとに金利が変動するタイプ、固定金利は借りたときの金利が一定期間(または返済終了)まで変わらないタイプです。
日銀の利上げによって特に注意したいのは、変動金利型の住宅ローンを利用している人です。変動金利型の住宅ローンは半年ごとに金利が見直される仕組みで、政策金利の変化が反映されやすいのが特徴です。
変動金利型の住宅ローンの金利は「短期プライムレート」(金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利)をもとにした金利から、金融機関ごとに定める引き下げ幅です。割引の大きさが金融機関によって違うので、変動金利の水準も金融機関によって異なります。
短期プライムレートは各金融機関がそれぞれ定める最優遇金利で、2024年半ばまでは多くの金融機関で1.475%が採用されていました。しかし、その後たびたび引き上げられ、2026年8月時点で2.375%前後となっています(日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」より)
これに合わせて、金融機関が提示している変動金利型の住宅ローンの金利も上昇傾向にあります。以前は年0.3%、年0.4%という住宅ローンも見かけましたが、本稿執筆時点では年1%強の水準になってきています。
固定金利型の住宅ローンでも借入時の金利は市場金利が上昇すれば変わります。固定金利は長期金利、主に「10年もの国債利回り」に影響を受けます。長期金利も上昇しており、2026年8月17日には一時2.93%と、約30年ぶりの高水準となっています。
<変動金利と固定金利>

(株) Money&You作成
変動金利で住宅ローンを借りた場合、政策金利が上昇することで住宅ローンの毎月の返済額も増えます。ただし、実際は利上げがあったからといってすぐに返済額が増えるわけではありません。多くの金融機関では、変動金利に「5年ルール」「125%ルール」というルールを定めているからです。
●5年ルール
5年ルールは、住宅ローンの毎月の返済額の見直しを『5年に1度行う』ルールです。変動金利で住宅ローンを借りたときの金利は、半年に1度見直されます。しかし、それによって金利が上昇しても、5年ルールによって実際の毎月の返済額は5年に1度しか変わりません。
●125%ルール
125%ルールは、変動金利の上昇によって返済額の見直しがあっても、見直し後の月々の返済額は「前回の返済額の125%までしか増えない」というルールです。たとえば、毎月の返済額が10万円だった場合、住宅ローン金利がどれだけ上昇していたとしても、返済額は12万5000円までしかアップしません。
一方、固定金利型の住宅ローンであれば、利上げがあっても契約時の金利が返済期間中は変わりません。契約後は利上げの影響を受けにくいと言えます。
政策金利が1%上がると家計への影響は?年代別シミュレーション
内閣府「令和8年度年次経済財政報告」には、住宅ローンの借入金利が1%、預金金利が0.6%上がったときに家計に与える影響が年代別にまとめられています。
<金利上昇と家計の影響>

参照:内閣府「令和8年度年次経済財政報告」より(株)Money&You作成
預金が比較的少なく住宅ローンの借り入れが多い20代〜40代の場合、金利上昇による預金増加よりも住宅ローンの負担が大きくなるため、トータルでマイナスになってしまいます。特に30代では、住宅ローンありで約24万円もの負担増になっています。
預金が比較的多い50代〜70代の場合、預金増加も多くなるのですが、住宅ローンありの場合はやはりトータルでマイナスです。
住宅ローンがない場合はトータルでプラスになります。年代が上がり、預金が多いほどその恩恵が大きくなることが読み取れます。
実際、住宅ローンの金利が上がると、返済額はいくら増えるのでしょうか?
住宅金融支援機構のシミュレーションを利用して、以下の条件で試算してみました。
●変動金利
- 借入金額:5000万円
- 借入期間:35年
- 元利均等返済、ボーナス払いなし
- 金利:変動金利1%
- プラン1…5年ごとに金利が0.5%ずつ上昇した場合(1.0%→4.0%まで上昇)
- プラン2…35年間ずっと金利年1%だった場合
<総返済額の比較>

参照:住宅金融支援機構のシミュレーションより(株)Money&You作成
変動金利が上昇するプラン1は、金利上昇に合わせて5年に1度毎月の返済額が増加していきます。総返済額は金利が上昇しないと仮定したプラン2よりも約1000万円も多くなります。総返済額に占める利息の割合も12.1ポイント高くなっています。変動金利の上昇によって家計の負担が徐々に大きくなってしまうことを示しています。
●固定金利
- 借入金額:5000万円
- 借入期間:35年
- 元利均等返済、ボーナス払いなし
- 金利:固定金利(※いずれもフラット35、融資率9割以下)
- プラン1…年3%
- プラン2…年4%
- プラン3…年5%
<総返済額の比較>

参照:住宅金融支援機構のシミュレーションより(株)Money&You作成
全期間固定ローンのフラット35の金利は2026年に入ってからの上昇が顕著です。2026年8月の最低金利は3.29%で、制度改正のあった2017年10月以降で過去最高となっています。試算では年3%・4%・5%の場合を比較しています。5%だと、借入金額よりも利息のほうが多くなってしまいます。
固定金利で住宅ローンを借りれば、そのあとで金利がどう動こうが返済額は一定になるという安心感はありますが、新たに借り入れるときの金利が高くなってしまえば毎月の返済額も総返済額も大きくなり、負担も増します。
変動金利と固定金利はどう選べばいい?向いている人の違い
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査」(2026年1月調査)によると、利用した住宅ローンの金利タイプは「変動型」が最も多く75.0%となっています。金利上昇局面とはいえ、固定金利よりも変動金利のほうが金利の水準が低いことから、変動金利のほうが選ばれているようです。
しかし、今後は変動金利での負担が増えるかもしれないことを考えると、変動金利と固定金利のどちらがいいかには、正解はありません。
変動金利と固定金利、それぞれが向いているのは、次のような人です。
●変動金利が向いている人
- 金利が上がっても家計に余裕がある
- 貯蓄や投資資産があり、いざという時に対応できる
- 借入額が大きすぎない
- 借入期間が比較的短い
- 返済額が増えても慌てず対応できる
●固定金利が向いている人
- 将来返済額が増えると困る
- 子どもの教育費など大きな支出が見えている
- 家計の見通しを立てやすくしたい
- 金利のニュースで毎回不安になる
- 多少金利が高くても安心を優先したい
- 共働きでも将来どちらかの収入が減る可能性がある
大切なのは、「今の金利がどちらのほうが低いか」だけでなく、将来金利が上昇した場合にも無理なく返済を続けられるかを考えることです。
返済額が増えると家計が苦しくなりそうな人や、将来の教育費など大きな支出を予定している人は、多少金利が高くても返済額を見通しやすい固定金利が向いています。
金利が上昇しても家計に余裕があり、貯蓄などで対応できる人は、当初の金利が低い変動金利を選ぶメリットがあるでしょう。 住宅ローンは数十年にわたって返済するものです。「金利が上がらないだろう」と楽観的に考えるのではなく、金利が上昇した場合の返済額もシミュレーションしておきましょう。金利の高低だけでなく、自分の家計にとってどちらが無理のない選択なのかを考えることが大切です。
頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。確定拠出年金制度の運用改善等に関する有識者懇談会構成員。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保のアフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍120冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。
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