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投資詐欺広告で約278億円も被害に…手口と被害に遭わないための対策は

「ラクしてお金が稼げたらいい」と、誰でも思うでしょう。そんな気持ちにつけこんでお金を騙し取ろうとする投資詐欺広告が、このところ増えています。

投資詐欺広告は巧妙にできています。「自分は騙されない」と思っている人でも、いつの間にか被害に遭ってしまう可能性もあるのです。

今回は、急増している投資詐欺の被害とその手口、投資詐欺の被害に遭わないための対策を紹介します。

投資詐欺の被害が急増している

SNSなどで「●●氏推奨!爆騰必至の◯銘柄を無料で入手しましょう」のような広告を見たことはありませんか?●●氏は誰もが知っているような有名人。丁寧に写真などまで一緒に載っていて、本当に推奨しているように見えます。

しかし、これは立派な投資詐欺広告。有名人本人ではない何者かが、有名人に無断で本人の写真を使って投資詐欺広告を作り、SNSに流しているのです。もちろん投資詐欺広告ですから、広告の内容を信じて手続きしてしまうとお金を騙し取られてしまいます。

実は筆者である頼藤太希も勝手に名前と写真を使用されて、X、インスタグラム、Facebookなどに広告が出されています。誘導先はLINEアカウントのようです。

私は、LINE誘導を含め、投資先の斡旋、有料コミュニティやサロンは一切やっておりません。見つけたら通報のご協力をお願い致します。

警察庁では、SNSなどの非対面のサービスで人を騙し、投資の名目でお金を騙しとる詐欺のことを「SNS型投資詐欺」と呼んでいます。

2024年3月、警察庁が初めてまとめた「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」によると、2023年1月〜12月のSNS型投資詐欺の認知件数は2,271件、被害額は約277.9億円にものぼっています。また、後述しますが「ロマンス詐欺」の認知件数は1,575件、被害額は約177.3億円になっています。

SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の認知件数と被害額を合計すると、

・認知件数…3,846件

・被害額…約455.2億円

です。

2023年の特殊詐欺(いわゆる「オレオレ詐欺」や還付金詐欺、キャッシュカードを盗みとる詐欺など)の認知件数は19,033件、被害額は約441.2億円ですから、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺のほうが被害は大きくなっていること、そして1件ごとの被害額が多いことが読み取れます。

実際、警察庁の資料には、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺は

・2023年下半期の増加が顕著

・1件あたりの平均被害額は1,000万円超

・被害者の年齢層は男性50〜60歳代、女性40〜50歳代が多い

・投資名目でお金が騙し取られている

とまとめられています。

有名人をかたって騙す手口が横行

SNS型投資詐欺では、有名人をかたって騙す手口が横行しています。いくつか事例を紹介します。

・80代の女性がネットの投資広告にアクセスしたところ、著名な経済アナリストを名乗る男らからLINEアカウントに登録された。「アナリストのアシスタント」から投資代金を振り込むように指示され、2000万円を騙し取られた。その後、「1億2000万円の利益が出たが引き出すには手数料がかかる」と言われて、追加で1000万円騙し取られた。

・50代の女性が著名な経済アナリストを装った投資詐欺広告からグループチャットに誘導された。チャットではFXで利益をあげているかのようなやりとりが行われていた。投資の指南役に言われるままにお金を振り込み、約4900万円を騙し取られた。

・70代の男性が著名人を語る投資広告を見つけてアクセスしたところ、LINEアカウントに誘導され、銀の先物への投資話を持ちかけられた。価格が下がったときに投資するよう指示を受け、合わせて2億2000万円を振り込んだがその後連絡が取れなくなった。LINEでは有名人の声に似せたボイスメッセージも送られていた。

このような事例は連日ニュースなどで報じられているので、ご存じの方も多いでしょう。いずれも、ネットの有名人の広告が「入り口」で、そこからLINEなどの連絡手段に誘導され、お金を騙し取られています。

警察庁の資料によると、投資詐欺広告を見たサイト(当初接触ツール)でもっとも多いのは、男性がフェイスブック、女性がインスタグラムとなっています。そこからLINEなどに誘導され、お金を振り込んでしまうようです。

<投資詐欺の経路>

警察庁「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」より

相手(被害者)を安心させるために、なかにはAIを活用してまるで本人が話しているかのような音声を作って聞かせる事例もあるなど、巧妙化しています。

産経新聞の記事では、フェイスブックやインスタグラムを運営する米メタ社の投資広告に出てくる著名人を分析しています。これによると、もっとも多く登場するのは経済アナリストの森永卓郎さん。次いで実業家の堀江貴文さん、「2ちゃんねる」の開設者である西村博之さんなどとなっています。

政府も事態を重く見ていて、岸田首相は「犯罪者を確実に検挙するため、総合的なプランを6月に策定する」と述べ、対策に乗り出そうとしています。堀江貴文さんや実業家の前澤友作さんが自民党の会合に出席し、政府へ対策を求めたという報道もありました。

もっとも、米メタ社が発表した「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」 によると、これまでプラットフォーム上における安全を守るため、長年にわたり大規模な投資を行ってきたとし、詐欺対策もこれに含まれるとのこと。詐欺広告をなくすことは必要不可欠としつつも、「世界中の膨大な数の広告を審査することには課題も伴います」とし、抜本的な解決の難しさを示しています。

プラットフォームの運営元からすれば、広告収入は貴重な事業収入であることも鑑みると、SNS型投資詐欺がすぐになくなることは考えにくい状況です。

投資詐欺は他にもある

SNS型投資詐欺のほかにも、投資詐欺はいろいろあります。

ロマンス詐欺

ロマンス詐欺は、外国人や海外居住者を名乗る人がSNSなどの連絡手段でやりとりをすることで恋愛感情などを抱かせたうえで、お金を騙し取る詐欺です。SNS型投資詐欺同様に2023年に件数が急増しています。

出会い系サイトやマッチングアプリで出会った相手に投資の勧誘を受け、いざ投資をすると音信不通になってしまうというケースが該当します。一見、そんなことあるのかと思われるかもしれませんが、親近感のある人に「2人の将来のためだから」「助けてほしい」などと言われると、なかなか断れないようです。

また、SNSで知り合った人に言われるがままに投資をしたものの、返金を求めると高額な費用を請求されたという事例もあります。

ポンジスキーム

「ポンジ」とは、米国の詐欺師、チャールズ・ポンジから名付けられた言葉です。簡単にまとめると、次のような仕組みで詐欺を行います。

①元本保証・無リスクをうたい、年10%や20%など高利回りの投資案件で出資者からお金を集める

②運用で儲かっているように見せる(実際には運用していない)

③後から参加する別の出資者から集めたお金の一部を着服する

④残ったお金を以前の出資者に配当金と偽って横流しする

出資者が増えているうちは実際に配当がもらえるため、信用してしまうパターンも多いようです。しかし、出資者が少なくなると、「配当金」を横流しできなくなってしまうため、やがて破綻します。破綻すれば、出資者のお金は戻ってきません。多くの場合、詐欺師は音信不通になるため、泣き寝入りするケースも後を絶ちません。

うまい話はないと心得よう

では、どうすれば投資詐欺に遭わずに済むのでしょうか。5つ紹介します。

①元本保証・無リスクで月1%、年10%という商品は絶対にない

投資には必ずリスクがあります。リスクがないとリターンは得られません。リスクはリターンとトレードオフ(比例)の関係にあるため、「元本保証・無リスクで年10%」という商品は絶対にありません。「必ず儲かる」「元本保証です」などと言われたら、まず投資詐欺だと考えていいでしょう。おいしい話には必ず裏があります。高利回りに目がくらまないように、くれぐれもご注意ください。

②家族、友人、知人の誘いでも、秘密のグループやコミュニティには入らない

SNS投資広告詐欺は、広告をクリックした人をLINEなどのアカウント・コミュニティに勧誘し、そこでお金を振り込むように伝えてきます。ですから、LINEのアカウントやグループに勧誘されたらまず詐欺だと思いましょう。繰り返しになりますが、あなただけに有益な情報を紹介することはありえません。

家族や友人から秘密のグループやコミュニティに誘われることもあるかもしれません。近しい人だけに信用をしてしまいがちですし、断りにくいかもしれません。しかし、だからといって入ってしまったら餌食となるのは目に見えています。こうした誘いはきっぱりと断りましょう。

また、金融庁の「金融サービス利用者相談室」や消費者庁の「消費者ホットライン」など、しかるべき専門機関に相談しましょう。

③日本語が不自然だったらアウト

SNS投資広告のなかには、日本語が不自然なものもあるようです。文章の「てにをは」や主語と述語の関係がおかしなもの、漢字がまちがっているもの、日本では使わないような旧字体の漢字が使われているもの、などがあります。前述のボイスメッセージでも、肝心の自分の名前を読めずに間違えているものもあるそうです(さすがに、自分の名前の読み方を間違えるのはおかしいですよね)。日本語が不自然だったら、海外の詐欺師による犯行かもしれません。少しでも変だったら、利用してはいけません。

④ボイスメッセージ、動画も注意

犯罪者はできるだけ相手を信用させるために、本人が話しているようなボイスメッセージや動画などを見せてくることがあります。しかし、今は本人そっくりのボイスメッセージや動画などがAIで作れてしまう時代です。どんなに精巧なボイスメッセージや動画が送られてきても、まず本物ではないので、信用しないことが大切です。

そもそも著名人は、個人的にあなたに電話や直接メッセージなどをしてくることもありませんし、いきなり情報提供することもありません。

⑤投資商品の販売会社・運営会社を調べる

投資商品を販売する会社をウェブサイトなどで調べてみましょう。詐欺を働く会社は、詳細な情報をなるべく見られたくないので、ほとんど公表していないものです。会社名はもちろん、住所、電話番号、代表者の名前などがきちんと出ているか、確かに存在するのかを確認しましょう。もしもこれらが提示されていなければ、怪しい可能性が高いでしょう。

また、日本で金融商品を販売するには、金融商品取引業の登録が必要。これがなければ詐欺の可能性が高いでしょう。海外の業者だった場合は、ほぼアウトだと考えられます。

新NISAが始まった2024年は、これまで以上に人々の意識が投資に向いています。そのこと自体はよいのですが、投資が注目されるようになるにつれて、お金を騙し取ろうとする詐欺師が増えることも考えられます。現に2023年は、SNS型投資詐欺の件数・被害額が多くなっています。

今後、政府や企業によるSNS投資広告詐欺への対策が講じられるかもしれませんが、一番大切なのはやはり自衛です。誰もが簡単に儲かる投資などないことを肝に銘じましょう。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)  マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍90冊、著書累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki

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