
暴落があっても「投資をしないほうがリスク」といえる5つの理由
2024年の新NISAのスタートをきっかけに投資デビューを果たしたという人は少なくないのではないでしょうか。新NISAがスタートしてから投資を始める人が増えている印象があります。
ただし、昨年の8月に大暴落が起きたように、投資をしていると必ずといっていいほど暴落が起こります。そうなると、「投資をするのは怖い!」「投資なんてやめてしまおう」と思ってしまう人も少なくないでしょう。ですが、これからの時代は投資をしないほうがリスク。お金を守り、増やしていくためには投資が欠かせません。今回は、暴落があっても「投資をしないほうがリスク」といえる5つの理由を紹介します。
理由①:物価が上昇するとお金の価値が目減りする
ニュースで「◯◯が値上がりしました」とよく聞くようになりました。また、買い物や食事に行ったときに「前より高くなってる!」と気づいたことは、もう一度や二度ではないですよね。日本だけでなく、世界各地でインフレが起こっています。
インフレは「インフレーション」を略した言葉で、物価が上昇することです。そして同時に、お金の価値が目減りすることでもあります。
総務省によると、近年の消費者物価指数は天候等による価格変動の大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の指数でおおよそ前年比2〜3%ずつ増加しています。
<消費者物価指数(前年同月比・生鮮食品を除く)>
(株)Money&You作成
それに対して、大手銀行の預金金利は日銀の利上げの影響で上昇してきていますが、それでも本稿執筆時点(2025年1月27日)で0.1%。2025年3月からは年0.2%になる予定ですが、物価上昇率ほどは上昇していません。
仮に、預金金利がずっと年0.2%、物価上昇率が年0~3%の状態が30年間続いたとしたら、手元にある現金1000万円の価値は、次のように大きく目減りします。
<物価上昇率が0〜3%の場合、現金1000万円の価値は?>
(株)Money&You作成
物価上昇率が0%ならば、預金金利の分だけ預金が増えます。お金の価値は目減りしません。しかし、物価上昇率が1%〜3%の状態が続くと、お金の価値はどんどん目減りしてしまいます。
この目減りに対抗するには、お金を物価上昇率以上に増やす必要があります。つまり、投資が欠かせないというわけです。
理由②:収入を増やすのには限界がある
お金を増やす方法にはいろいろありますが、突き詰めると
・収入を増やす
・支出を減らす
・お金に働いてもらう(投資する)
の3つしかありません。
リスクを取るのが嫌だから投資をしないとなると、収入を増やすか支出を減らすかしかありません。
優先すべきは支出を減らすことです。バケツに水を貯めたくても、底が抜けているのでは、水は貯められないですよね。お金も、貯めようとするならば先に支出を抑える必要があります。
ただ、支出の見直しには限界があります。いくら節約しても支出がゼロになるわけではありません。それに、わずかな節約のために多大な労力がかかるようでは、支出の見直しの「費用対効果」も悪くなってしまいます。
「収入を増やす」は一見、青天井です。このところの賃上げの流れで、給料が増えている人もいます。給料が増えないからといって、もっと頑張って働いたり副業したりする人もいるでしょう。自分でビジネスを立ち上げる人もいるかもしれません。
しかし、ビジネスを立ち上げるのは誰でもできるわけではありませんし、1日の就労時間には限りがあります。寝ないで働くのは無理ですし、体を壊してしまえば本末転倒です。収入を増やすことにも、限界があるのです。
これからお金を増やすのであれば、自分が寝ている間にもお金を稼いでくれる、インフレに立ち向かえる資産を持つこと。それにはやはり、収入を増やすでも支出を減らすでもなく「お金に働いてもらう(投資する)」ことが必要なのです。
理由③:長期・積立・分散投資で堅実に増やせる
投資には確かに元本保証はありません。お金を減らす可能性もあります。しかし、「長期」「積立」「分散」投資を行えば、お金を堅実に増やす期待ができます。
長期投資は、数十年という長い期間でじっくりと投資することです。
日々の値動きに合わせて投資する短期投資では、一時的な値動きの要因でお金を減らしてしまう可能性があります。その点、長期投資ならば世界経済の成長とともに利益を得る期待ができます。
世界の人口は2024年時点で80億人を突破し、「世界人口推計2022年版」によれば、2058年には100億人に達すると推計されています。人口が増えれば消費も増え、それに合わせてモノやサービスの生産も増え、経済が拡大し、企業収益も拡大していきます。数十年といった長期のスパンで見れば、今よりも株価が上昇する可能性が高いでしょう。
また、長期投資を行うと複利効果が得られます。複利効果とは、利益を再投資することで、利益が利益を生み、資産が増える効果です。複利効果は、時間をかけるほど大きくなります。
積立投資は、定期的に一定額ずつ投資することです。金融商品の価格は日々上下しています。そのなかで一定額ずつ投資する積立投資を行うと、商品の価格が安いときにたくさん買い、高い時には少ししか買わなくなります。これによって、平均購入単価が下がることを「ドルコスト平均法」といいます。ドルコスト平均法を淡々と続けることで、平均購入単価が下がれば、少しの値上がりでも利益を出しやすくなります。
分散投資は、値動きの異なる複数の資産に投資することです。分散投資をすることで、投資先のある資産が値下がりしてもほかの資産の値上がりで損失をカバーできる可能性もあります。投資信託は1本で数十から数百の投資先に投資しているため、1本買うだけでも分散投資ができます。
一瞬のタイミングをとらえて勝負するような「短期」「一括」「集中」投資が上手にできる人はごくわずかですし、そうした人であっても大失敗する可能性があります。投資で失敗して、市場から「退場」した人は山ほどいます。
その点、「長期」「積立」「分散」投資は、毎月淡々と一定額ずつ投資します。この方法なら、誰にでもできますし、何より堅実にお金を増やせる期待がもてます。
金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」や「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」によると、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に分散して積立投資した場合の年間収益率が紹介されています。
これらによると、1985年以降、保有期間20年の場合は投資収益率が年2%~8%の間に収まっていて、この期間では元本割れとなっていません。
あくまでも過去のデータですので、将来を予測・保証するものではありませんが、20年以上にわたって「長期」「積立」「分散」投資をすれば、お金を減らさずに増やせる可能性が高いことを表しています。
理由④:いつまでも暴落し続けることはなく、いずれ回復する
「長期」「積立」「分散」投資を行なっていても、市場はときに暴落します。新NISAがスタートして話題になった2024年も、8月に暴落がありました。
<2024年の日経平均株価とドル円為替レートの推移>
(株)Money&You作成
2024年8月の暴落は、わずか2日間で6,668円も下落するという歴史的なもの。1987年の「ブラックマンデー」を上回る下落だと話題になりました。同時に為替レートも一気に円高に触れている様子がわかります。
こうなると、いくら「長期」「積立」「分散」投資を行なっていても、一時的に大きく資産が減ったり、元本割れしたりすることがあります。
しかし、グラフからもわかるように暴落からの立ち直りも早く、年末にかけて株価が回復。12月末には一時4万円台を突破しています。市場に暴落はつきものですが、過去を振り返っても暴落し続ける相場はなく、やがて回復しています。
つまり、暴落があったときにもっともやってはいけないことは、暴落に慌てて売ること、というわけです。暴落に慌てて売ってしまうと、値下がりしたタイミングで利益(または損失)が確定してしまいます。そのうえ、その後の値上がりによる資産回復の恩恵も受けられなくなります。
<暴落から回復するまでの期間の目安>
(株)Money&You作成
回復までの期間は1〜3年、長くて5年ほどです。暴落からどれくらいで回復するのかを把握しておきましょう。
理由⑤:資産運用で得られる利益は労働で得られる利益より多い
今後世界の人口が増加し、世界全体が経済成長していくならば、世界全体に投資をしていたほうがよりお金が増やせると考えられます。
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は著書「21世紀の資本」の中で「r>g」という不等式を掲げています。これは、投資のリターン(r)が経済成長率(g)より大きくなることを示したものです。
国際通貨基金(IMF)が発表している「世界経済見通し」によると、世界経済成長率は1980年以降、おおむね年3〜4%で推移してきています。2025年1月に発表された「改訂版でも、2025年・2026年の世界経済成長率が3.3%と予測されています。「過去(2000~2019年)の平均である3.7%を下回る」と記載されていますが、それでもやはり3%を上回っています。
つまり、ピケティの不等式は「世界に分散投資するだけで3%を超えるリターンが得られる可能性が高い」ことを表している、というわけです。
経済成長がこれからも続くなら、株価や為替レートを気にせず始めたほうがいい
投資を始める際に、株価や為替レートを気にする人がいます。「今は株価が高値圏だから投資はしないほうがいい」「為替レートが円高になったら投資を始める」などという具合です。確かに、株は安いときに買って高いときに売れば利益(値上がり益)が得られますが、株価や為替の動向を把握するのはプロでも難しいです。
その中で、株高か円安かを短期的な目線で気にして投資をためらっていたら株価上昇の恩恵はいつまでも受けられなくなってしまいますので、1日でも早く長期・積立・分散投資を行うことをおすすめします。
もちろん、投資先はどこでも良いわけではありません。投資する資産が長期的に成長する資産であるかどうかが大切です。
上記でも触れた通り、世界人口は増加傾向にあり、世界経済は拡大していくことが予想されます。ですから、国内外の株式や債券など、世界中の資産に分散投資することにより、世界経済の成長の恩恵を受けられます。
投資するタイミングは気にせずに、将来成長する可能性が高い資産にコツコツと投資を続けることが大切です。
高山一恵 (株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演活動、多くのメディアで執筆活動、相談業務を行ない、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。月400万PV超の女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』やチャンネル登録者1万人超のYouTube「Money&YouTV」を運営。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)、『マンガと図解 定年前後のお金の教科書』(宝島社)など著書累計170万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。