楽天、PayPay、ドコモ、au、イオン、三井住友…「経済圏」にはどんなサービスがある?
系列のサービスを使うほどお得になる「経済圏」。普段から意識して使っていますか?使いこなしたい…と思いながらも、いろいろなサービスがありすぎてうまく使えていない人もいるのではないでしょうか。
今回は、楽天、PayPay、ドコモ、au、イオン、そして2024年4月に登場した、三井住友フィナンシャルグループが展開する「Vポイント」の6つの経済圏のサービスの特徴をご紹介します。経済圏選びのポイントも解説します。
顧客の囲い込みが進む経済圏
経済圏は、各社の系列のサービスを使うことで共通のポイントを貯めたりお得なサービスを受けられたりする仕組みのことです。
ユーザーは、生活のあらゆるサービスを経済圏に紐づけることで、ポイントを効率よく貯めたり、より多くの割引を受けたりできます。手に入れたポイントは同じ経済圏のなかで再度使うことで、お得度が増していきます。
また経済圏を展開する各社も、経済圏で顧客を囲い込むことで自社のサービスをたくさん使ってもらえるため、各社ともサービスの充実を図り、激しいシェア争いを展開しています。
もっとも、ユーザーである私たちにとっては、サービスが充実するほどお得になるのですから、競争してくれるのはありがたいことかもしれません。経済圏を意識して生活することで、生活費を削減することができるのですから、ぜひ使いこなしたいですね。
各経済圏のサービスはどうなっている?<楽天、PayPay、ドコモ>
ここでは主な経済圏として、楽天経済圏、PayPay(ソフトバンク)経済圏、ドコモ経済圏、au経済圏、イオン経済圏、Vポイント経済圏の6つの経済圏のサービスや特徴を見ていきましょう。各決済のポイントをかしこく手に入れる「2重取り・3重取り」の情報もまとめました。なお、以下の情報は2024年5月10日時点のものです。
<主な経済圏とサービス>
(株)Money&You作成
楽天経済圏
楽天経済圏では、SPU(スーパーポイントアッププログラム)の対象サービスを利用して条件を達成すると、楽天のショッピングサイト「楽天市場」での買い物で得られるポイントが最大17倍(17%)に増えます。したがって、楽天系列のサービスをたくさん利用して楽天ポイントを貯めつつ、楽天市場で買い物をすることでお得度が増していきます。
SPUの条件は次のとおり。変更になることもしばしばあります。
<SPUの条件(2024年5月13日時点の情報に基づく)>
楽天のウェブサイトより(株)Money&You作成
近年は、楽天モバイル契約者が有利になっています。楽天モバイル(Rakuten最強プラン)を契約すれば楽天市場での買い物時のポイントが+4倍になります。また、Android限定ながら楽天モバイルのキャリア決済(ゲームアプリ内での課金、LINEコイン、YouTube Premiumなどの料金支払い)で月2,000円以上の料金を支払うと+2倍という具合です。楽天ひかり、楽天でんき、楽天トラベルといったサービスもSPUの対象ですし、利用することで楽天ポイントが貯まります。
楽天証券と楽天銀行の口座を連携する「マネーブリッジ」を設定すると、楽天銀行の口座に入金したお金が直接楽天証券での投資に利用できるようになります。そのうえ、普通預金の金利が年0.02%から最大年0.1%に優遇されます(普通預金残高300万円超の部分は年0.04%)。楽天証券でも「楽天・プラス」シリーズの投資信託の平均保有金額に応じて楽天ポイントの還元が受けられます。
<2重取り・3重取り>
楽天カードで「楽天キャッシュ」にチャージして楽天ペイで支払う(チャージ払い)と、楽天キャッシュのチャージで0.5%+チャージ払いで1%=最大1.5%のポイント2重取りが実現します。そのうえ、楽天ポイントカードの対象店舗ならば楽天ポイントカードを提示することでさらに1%のポイントがもらえるので、3重取りもできます。
なお、2024年6月4日から、ポイントの進呈対象がチャージ払いのときに統一されます。これにより、楽天カード以外の方法で楽天キャッシュにチャージして楽天ペイでチャージ払いしても最大1.5%のポイント還元が受けられるようになります。
PayPay経済圏
PayPay経済圏は、ソフトバンクグループの経済圏です。PayPayといえばスマホ決済の草分け的存在。利用している方も多いでしょう。PayPay経済圏を利用すると、「PayPayポイント」が貯まります。
PayPayを利用した場合の基本還元率は0.5%ですが、「クレジット」(PayPayカードをPayPayに紐づけて支払い)の利用で翌月+0.5%、月30回200円以上・10万円以上利用で翌月+0.5%と還元率をアップできるため、合計で最大1.5%還元となります。さらに、PayPayカードゴールドの場合は還元率が0.5%アップするため、合計で最大2%還元となります。
さらに、2023年10月にスタートしたソフトバンクのスマホ料金プラン「ペイトク」では最大でPayPayの通常の還元率を+5%(上限:月4000ポイント)にできます。
基本料金こそ9,625円(「ペイトク無制限」の場合)と、通常のスマホプランよりやや高いですが、「PayPayカードゴールド」を利用すると、ソフトバンクのスマホや光回線代の支払いで10%還元を受けることもできるため、さらにポイントが貯まります。ソフトバンク・ヤフー関連のサービスをたくさん利用している方が有利な経済圏です。
PayPayの「PayPay資産運用」やPayPay証券では日本株・米国株に株価に関わらず1,000円から投資可能。PayPay資産運用ではPayPayポイントを利用した商品の買い付けもできます。
<2重取り・3重取り>
PayPayはチャージでポイントがつかず、「クレジット」で支払うとクレジットカードのポイントが優先される(PayPayアプリのポイント還元はクレジットカードと重複しない)ため、PayPayポイントの2重取り・3重取りはできません。ただ、上で紹介したとおり還元率をアップさせる方法はあります。
ドコモ経済圏
ドコモ経済圏を利用すると「dポイント」が貯まります。PayPay経済圏同様、dカードGOLDを利用してドコモの利用料金や光回線の代金を支払うと、最大10%のポイント還元が得られます。また、dカードGOLDを利用して「ドコモでんき」の料金を支払うことでも、最大10%のポイント還元が得られます。
ドコモ経済圏ではこのところ、他社との提携のニュースが相次ぎました。
2024年1月からはネット証券大手のマネックス証券と提携。今後、dカードを利用したクレカ積立やdポイントでの投資信託の購入サービスなどが提供される予定です。マネックス証券では、クレカ積立によって最大1.1%の「マネックスポイント」の還元が得られるのですが、dポイントの取扱いはマネックスポイントと同水準にする予定とのことです。
さらに2024年4月からはAmazonとも決済やポイント事業の提携を開始。Amazonにログインしてd払いの設定を行うことで、Amazonで5,000円以上の買い物をすることで1%分のdポイントが貯められるようになりました。Amazonでの買い物にもdポイントが使えるようになっています。
そのうえ、ドコモからAmazonプライムに登録(はじめて登録する方・一定期間Amazonプライムに登録したことがない方が対象)することで毎月120ポイントのdポイントの還元が受けられます。Amazonプライムは月600円(税込)のサービスですが、実質480円で利用できる計算です。
<2重取り・3重取り>
d払いの支払い方法でdカードを設定し、d払いを利用して支払いをすると、dカード設定で0.5%+d払いの支払いで0.5%=1%のポイント2重取りが可能です。さらに、dポイント対応の店でdポイントカードを提示すると+1%になるので、還元率2%の3重取りもできます。
各経済圏のサービスはどうなっている?<au、イオン、Vポイント>
<主な経済圏とサービス>
(株)Money&You作成
au経済圏
au経済圏では、Pontaポイントが貯まります。注目は2023年9月にスタートしたauのスマホ料金プラン「auマネ活プラン」。auマネ活プランの基本料金は7,238円ですが、以下の条件を満たすと最大で800円相当のPontaポイントの還元が受けられます。
・au PAYカードの会員:300円相当
・auじぶん銀行の口座を保有:300円相当
・au PAYカードかauじぶん銀行で通信料金支払い:200円相当
また、au PAYゴールドカードとauマネ活プランを併用すると
・auの通信料金の決済で通常10%還元(当初1年間は20%還元)
・au PAYの決済で還元率0.5%上乗せ
(au PAYの支払いで0.5%+au PAYゴールドカードからのチャージで1%+auマネ活プラン0.5%=還元率2%)
・au PAYカードの決済で還元率0.5%上乗せ
(au PAYゴールドカードからのチャージで1%+auマネ活プラン0.5%=還元率1.5%)
が受けられます。
au PAYゴールドカードを利用しなくても、ネット銀行の「auじぶん銀行」の円普通預金の金利が0.3%にアップし、auカブコム証券のクレカ積み立ての還元率が上乗せされます。
また、毎月5のつく日と8日は「たぬきの吉日」といって、auユーザーなら+4.5%、UQモバイルユーザーなら+2.5%の還元があります。ネットでの買い物でau PAYカード・au PAYゴールドカードを利用することで「買い得メンバーズ」では、店舗やカードの利用、電子書籍やふるさと納税など最大9%の還元が得られます。
<2重取り・3重取り>
上でも少し触れていますが、au PAYの還元率は0.5%ですが、au PAYゴールドカードならばチャージで1%還元が得られるため、Pontaポイント1.5%還元の2重取りが可能。また、Pontaポイント加盟店でPontaカードを提示するとさらに最大1%のPontaポイントがもらえるため、合計2.5%の3重取りが実現します。なお、一般カードのau PAYカードでのau PAYへのチャージは還元対象外なので注意が必要です。
イオン経済圏
イオン経済圏は、イオン系のスーパーを中心とした経済圏。WAON POINTが貯められます。
イオンカードセレクトをはじめとするイオンカードの基本の還元率は0.5%ですが、イオングループの店舗で利用することで還元率が0.5%アップします。また、お客さまわくわくデー・ありが10デーといった特定の日に利用することでポイント還元が多くなります。そのうえ、毎月20日・30日の「お客さま感謝デー」は買い物が5%オフになるので、生活費の削減の味方になります。さらに、株主優待でもらえる「オーナーズカード」を買い物のときに提示すると、買い物額の3%~7%がキャッシュバックされます。
イオン銀行のサービス「イオン銀行Myステージ」では、イオン銀行口座の取引によって貯まる「イオン銀行スコア」のステージに応じて、普通預金の金利が上がったり、ATMの手数料が優遇されたりする特典が得られます。
<イオン銀行Myステージの特典>
イオン銀行のウェブサイトより(株)Money&You作成
イオン銀行スコアの対象になる取引は次のとおりです。
<イオン銀行スコアの対象になる取引>
イオン銀行のウェブサイトより(株)Money&You作成
イオン銀行で住宅ローンなどの対象ローンの借り入れをしている人が利用できる「イオンセレクトクラブ」では、発行される「セレクトクラブカード」を利用して対象店舗で買い物をすると、請求時に5%オフの特典が受けられます。セレクトクラブカードの特典はオーナーズカードとは併用できませんが、お客さま感謝デーの5%オフやお客さまわくわくデー・ありが10デーのポイントアップとは併用できます。
スマホ決済の「AEON Pay」を利用することでポイント還元がさらに多くなるときもあります。「イオンお買い物アプリ」でもクーポンが配信されて割引が効くので、生活費の削減に役立ちます。
イオン銀行も2024年1月よりマネックス証券と業務提携をスタート。投資可能な投資信託が増えたほか、株式やETF(上場投資信託)にも投資ができるようになりました。
<2重取り・3重取り>
イオンカードセレクトには電子マネーWAONのオートチャージ機能が付いています。これを利用すると、オートチャージで0.5%、買い物で0.5%の電子マネーWAONポイントがもらえる2重取りができます。毎月10日の「ありが10デー」なら買い物200円ごとに5ポイント、毎月5日・15日・25日の「お客さまわくわくデー」なら買い物200円ごとに2ポイントが付与されます。
Vポイント経済圏
2024年4月にSMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)が手がけるVポイントとCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が展開するTポイントと統合し、新たに「青と黄色のVポイント」となりました。
Vポイントは、三井住友カードやOliveフレキシブルペイ(銀行・クレジットカード・ネット証券・保険などの情報を一元管理できる「Oliveアカウント」開設者が利用できるクレジットカード)の利用に応じて貯めることができます。そして、貯まったVポイントは支払いやポイント投資などに活用できます。
Vポイントの還元率は0.5%(一般カードの場合)ですが、セブンイレブン、ローソン、マクドナルド、すき家、サイゼリア、ガスト、ココス、はま寿司、ドトールといった対象のコンビニや飲食店でタッチ決済を行うことで、最大7%のポイント還元が得られます。また、
・家族を登録していると最大+5%還元
(家族を1人登録するごとに+1%。家族とポイントを分け合うこともできる)
・Vポイントアッププログラムで最大+8%還元
(SBI証券や住友生命のサービス利用やOliveアカウントの利用に応じて還元率アップ)
といった特典も受けられるため、対象の店舗で利用する機会が多いならばお得です。
VポイントとTポイントの会員数は単純合算で1億5400万人とのこと。他の経済圏よりも大規模です。今後のサービス拡充にも期待したいところですね。
<SBI証券のクレカ投資>
SBI証券では三井住友カードを利用した「クレカ積立」のサービスを行っています。クレカ積立のVポイントの還元率は、クレジットカードの種類によって0.5%~5%。一般カードでは0.5%ですが、各種ゴールドカードだと1.0%、各種プラチナカードだと2.0%、そして最上位の「三井住友カード プラチナプリファード」だと還元率は5.0%にアップします。
ただし、この還元率は2024年10月買付分まで。2024年11月買付分からは、年間の三井住友カードの利用額に応じてポイント付与率が変わります。具体的には、次のとおりです。
<クレカ積立の還元率>
(株)Money&You作成
2024年11月買付分以降は、年間カード利用額に応じてポイント還元率が変わる仕組みになります。ゴールドカードや一般カードでは年間10万円以上の利用がないと、クレカ積立によるポイント還元は受けられなくなります。最上級の「プラチナプリファード」でも還元率が3%になる点に注意しましょう。
<2重取り・3重取り>
旧Tポイントの加盟店では、Vポイントに統合した後でもTポイントカードを提示することでVポイントが貯められます。三井住友カードを利用して支払い、Tポイントカードを提示することでVポイントの2重取りが可能です。
お得な経済圏を選ぶポイント
ここまで紹介してきたように、経済圏は使うほどお得になるしくみです。したがって、さまざまな経済圏を少しずつ使っていると、ポイントが分散してしまいますし、使いにくくなってしまいます。それに、お金の流れも見えにくくなってしまいます。ですから、
1つか2つに絞って使うのがよいでしょう。
経済圏を選ぶ際には、
普段使う決済(クレカ、電子マネー、スマホ決済、ポイントカードなど)と相性が良いか
生活圏で利用できるか、利用できる実店舗数が多いか
還元率が高いかどうか、キャンペーンは充実しているか
を踏まえて選びましょう。
複数の経済圏を少しずつ使っている場合も、なるべく1つか2つに絞っていきます。そうすれば、利用している経済圏のお得度もアップします。利用シーンを考えて、
・対象のコンビニや飲食店では「三井住友カード」のスマホタッチ決済でVポイント7%還元
・その他の店舗では「PayPay」でPayPayポイント最大1.5%還元
などと絞って使うようにすれば、VポイントとPayPayポイントの2つだけがたくさん貯められるようになります。ポイントが集約できれば、大きな買い物もしやすいですし、お金の流れもわかりやすくなります。
一方、よりよいと思われる経済圏があって、移行を悩んでいるならば
ポイント還元率やルールの変更は頻繁にあるものと割り切る
キャンペーンに飛びつかない
ことが大切です。
経済圏の移行は手間も時間もかかって面倒なものです。サービスの解約手続きや申し込み手続きはもちろん、各サービスの料金の支払い先を変更しなければならない場合もあります。それだけの労力をかけても、肝心のメリットである還元率が変わる場合もよくありますし、キャンペーンはいずれ終わります。
どの経済圏を利用するかで還元率に多少の違いはありますが、「経済圏を移行したらポイントがこれまでの10倍貯まるようになった」というような劇的な違いはありません。本当にお得になるのか、よく吟味した上で取り組むのがよいでしょう。
頼藤 太希(よりふじ・たいき) マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍90冊、著書累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。twitter→@yorifujitaiki