投資=ギャンブルではない?投資とギャンブルの決定的な違いは
投資に興味はあっても、なかなか「はじめの一歩」が踏み出せない。そんな人には「投資はギャンブルと同じようなもの」、という思い込みがあるのかもしれません。確かに、投資とギャンブルは似ているところもあります。しかし投資とギャンブルは、そもそもの主旨が異なります。
今回は、投資とギャンブルの違いについてお伝えします。投資がギャンブルではないとわかれば、投資にチャレンジするモチベーションがあがってくるのではないでしょうか。
投資とは?ギャンブルとは?
投資とギャンブルは、お金の流ればかりに着目すると「投資=ギャンブル」と捉えてしまいがちです。
どちらも、自分の手元からお金を出して、増えて戻ってくるかもしれないが、ゼロになってしまうかもしれない。大きく増える確率は少ないが当たれば大もうけ、しかし逆に減る可能性もある。もっとひどければゼロになって無くなるかもしれない。そして、お金が増えるか減るか、もしくは無くなるかは、可能性の大小があるものの確実なところはわからない。
そんなふうに考えると、投資もギャンブルも同じように感じられるかもしれません。
しかし、投資とギャンブルは違います。
投資とは、「事業に資金を出すこと」です。
事業をする側から見ると、事業をするには資金が必要です。資金は銀行などの金融機関から借りるぶんもありますが、投資家から出資してもらうぶんもあります。
投資家にお金を出してもらうときには、「このような事業をするのでいくら必要、だから出資をしてほしい、事業が成功したらお金を増やしてリターンします」というような説明をします。
株式投資の場合なら、説明はおもに株主総会を通じてなされます。上場している株式であれば、資料も公開されていますので、株主総会に出席しなくてもいつでも確認することができます。投資家はその説明を見て、お金を出す価値があると判断すれば、資金を投資するわけです。
事業は、大当たりするかもしれませんが、そこそこの中当たりくらいかもしれません。もしかすると低迷するかもしれないし、まったくダメかもしれません。
その意味で、リターンは約束されたものではありません。
しかし、その事業がうまくいくことを見込んで投資をするので、そこには合理的な判断があります。
一方、ギャンブルは「博打」、「勝負事」、「賭け事」です。
たとえばパチンコ、競馬、競輪、競艇、それに宝くじもギャンブルです。
勝つか負けるかは運しだい。自分が何か頑張ったり工夫したりしても、結果が左右されるわけではありません。
大当たりすることもありますし、大ハズレでゼロになるかもしれませんが、ギャンブルは勝負を楽しむもの。不定期にめぐってくる当たりの快感に酔いしれて、依存症になってしまう人もいるくらいです。
ギャンブルもお酒と同様ほどほどに楽しむことが肝心で、それによって儲けるものではないと心得たほうがよさそうです。
投資とギャンブルの違いは?
では、投資とギャンブルの決定的な違いは何でしょうか。
それは、次の3つだと考えます。
投資とギャンブルの違い1:ギャンブルは損をする仕組みになっている
ギャンブルには、胴元がいます。宝くじ、競馬・競輪・競艇などの公営ギャンブルなら国や地方自治体、パチンコならパチンコ店がやっていますが、そこで働く人の給料だけではなく、さまざまなコストがかかっています。
ですから、かならず胴元が儲かるようにできています。
また、宝くじの売上げは公共事業にも使われています。そのため、売られる宝くじをすべて買い占めてもプラスにはならない、と聞いたことはありませんか?
宝くじ公式サイト「収益金の使い道」によると、宝くじの売上金額[T1] (令和3年度・8,133億円)は、次のような割合で振り分けられています。
・当せん金(当せん者に支払われるお金)・・・46.2%(3,758億円)
・公共事業など(全国都道府県・20指定都市の公共事業等に使われるお金)・・・37.5%(3,048億円)
・印刷経費などのコスト・・・14.9%(1,210億円)
・社会貢献広報費(地域文化の振興やコミュニティ活動の支援に使われるお金)・・・1.4%(117億円)
ですから、1000円の宝くじを買っても、その半分以上は胴元の取り分となり、残りの46.2%で当たりくじに配分する仕組みになっています。
この割合は、サッカーくじも同様です。
また、競馬・競輪・競艇は約25%、パチンコは10~20%が胴元に入ると言われています。
一方、投資に胴元はいません。
投資家から株式によってお金を集めた企業は、その資金を元手に事業をして利益を生み出します。事業がうまくいって利益が出れば、投資家は配当金を得ることができます。あるいは、値上がりした株を売って利益を得ることもできます。
証券会社を通じて株式の売買をすれば手数料はかかりますが、証券会社は胴元ではありません。手数料も明朗で、そのうえ証券会社によって異なりますので、安いところを選べばよいのです。
投資とギャンブルの違い2:投資は合理的な判断が必要
投資の場合、会社四季報や日々のニュースなどを踏まえて、どのような事業が発展していくのか未来の予想をすることが可能です。
新しい事業に参入する企業が複数あれば、より見込みのあるところを選ぶことになります。
ひとつの企業に絞り切れなければ、複数企業の株式を保有してもいいでしょう。
あるいは、その業界に特化した投資信託を購入してもいいですね。
業界ではなく国単位でもいいでしょう。たとえば、日本経済全体の成長を見込んでいるなら、TOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドを購入する、という選択肢もあります。
投資は企業や社会の成長によって恩恵が得られる仕組みです。
ですから、今後成長して欲しいと思う企業や業界に投資をする考え方もあります。
たとえば、環境問題の課題に取り組んでいる企業に投資をすれば、投資家として間接的に取り組んでいると言えるでしょう。
その逆に、いくら儲かりそうでも「投資をしない」という判断をすることもあります。
世界の企業のなかには、戦争が起きると大きな利益をあげる企業もあります。いわゆる軍需産業です。世界情勢が不安定な今、投資をすれば大きなリターンをあげられる時期かもしれません。しかし、その投資は戦争に加担しているという考え方もあります。
投資家は、株主であれば資金の使い方を企業に意見する場として、株主総会があります。
また、企業の方針に賛成できないと思えば資金を引き上げることで、意思表示をすることができます。
結果を待つだけのギャンブルとの大きな違いと言えるでしょう。
投資とギャンブルの違い3:税金が違う
利益が出れば税金がかかりますが、その点も投資とギャンブルは異なります。
まず、宝くじの当せん金には、所得税はかかりません。
パチンコ・競馬・競輪・競艇の払戻金は、基本的に一時所得です。一時所得は合計で年間50万円を超えない限り、確定申告をする必要はありません。利益が50万円を超えると確定申告をして税金を納める必要があります。
一方、株式投資の利益には、所得税と住民税をあわせて20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかり、原則として確定申告が必要になります。
ただし、証券会社の口座を、特定口座の「源泉徴収あり」にしておくと、確定した利益から税金が自動的に天引きされ、証券会社から納税するので確定申告の手間がはぶけます。
証券会社の口座が特定口座の「源泉徴収なし」の場合には確定申告しなければなりませんが、証券会社が年間の売買損益を計算して、年間取引報告書にまとめてくれます。この報告書があると、確定申告がスムースにできます。特定口座ではなく一般口座を選ぶと、年間取引報告書も自分で作成しなければならないので、かなり面倒です。
なお、投資の利益が非課税になるNISA口座での利益にはもちろん税金がかかりません。
2024年からはNISAが新しくなり、非課税の期間が無期限になります。また、非課税になる投資枠(生涯投資枠)は一人当たり1800万円です。
せっかく株式投資をするなら、非課税のメリットがあるNISA口座がおトクです。
このように見てみると、投資はギャンブルとはまったく違うものだとお分かりいただけるでしょう。
投資が注目されているわけ
長引く低金利で預貯金だけではお金は増えず、将来に不安を感じている人も多いでしょう。インフレによる物価高も、不安に拍車をかけているようです。
インフレによる金利上昇があっても、預貯金の金利がインフレ率よりも高くなければ将来的に預貯金の価値は下がってしまうからです。
そんななか、注目されているのが投資です。投資は元本保証ではありませんが、ある程度のリスクをとることで運用益を得られるので、預貯金より大きなリターンを見込めます。
政府も、多くの人に投資を活用してほしいと考えています。そのため、先ほど紹介したNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)や、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)といったおトクに投資ができる制度を用意して、投資してもらおうとしているわけです。
NISAもiDeCoも、投資による利益が非課税になるので、得られる利益が税金で目減りしないことが大きなメリットです。そのうえ、iDeCoは毎月の掛金が全額所得控除できるので、毎年の所得税や住民税を安くする効果も得られます。
また、NISA(現行のつみたてNISA・2024年からのつみたて投資枠)やiDeCoで購入できる金融商品には、証券会社などに支払う手数料が安く抑えられている投資信託がラインアップされています。投資初心者にとっても、チャレンジしやすい仕組みといえます。
ただし、自分なりに投資について勉強して臨むことが大切です。
合理的な判断がなされない投資は、ギャンブルと同じになってしまいます。
投資は、やり方によってはギャンブル的な「投機」にもなり得ます。ハイリターンを売りにしている投機は、見込みがはずれれば大損をしてしまいます。ギャンブルは賭けたお金がゼロになるリスクが大きいものですが、投機はゼロどころか、マイナスになるリスクすらあります。
投機の中には、レバレッジといって手持ちの資金の何倍もの金額を賭けることができる方法があります。株式投資でも、証券会社からお金などを借りて売買を行う信用取引では、最大で手持ちの資金の約3.3倍の取引ができます。さらに、通貨の売買で利益を狙うFX(外国為替証拠金取引)では、最大で25倍ものレバレッジをかけられます。手元に100万円しかなくても、25倍の2500万円を賭けられるということです。
このとき、うまくいって10%のリターンがあれば、100万円の元手で250万円の利益ですから、レバレッジのメリットを生かすことができます。
しかし、もし5%でも損失が出れば、金額にして125万円。25万円を追加で払わなくてはなりません。
そんなハイリスクな投機を、運任せでするのはとても危険なことです。
投資には、預貯金のような元本保証はありません。利益を得ることもあれば、損をすることもあります。利益・損失の金額も、大きい時もあれば、小さい時もあります。
しかしそれでも情報を集め、投資の判断を冷静に積み重ねていくことが大切です。そして、最終的に資産がトータルでプラスになればよいのです。
ギャンブルではなく、投資を上手に活用して、確かな資産づくりをしていきましょう。
タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー