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住宅ローン繰り上げ返済イメージ

住宅ローンの繰り上げ返済、金利上昇でも急ぐべきではない理由

住宅ローンの変動金利がじわじわと上昇し、「繰り上げ返済したほうがいいのでは」と悩む人が増えています。しかし金利が上がったからといって、とにかく繰り上げ返済すべきとは限りません。団信という保障や、NISA・iDeCoでの資産運用との比較を踏まえると、繰り上げ返済にはメリットだけでなく注意点もあります。本記事では、生活防衛資金・金利負担・保障とのバランスという3つの判断軸から、住宅ローンの繰り上げ返済をどう考えればよいかを整理します。

住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリットと2つの方法を解説

住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に、まとまったお金を返済して借入残高を減らすことです。

住宅ローンの月々の返済額は、元金(借入れた金額)と利息(借入れた金額から発生する費用)の返済に充てられますが、繰り上げ返済で支払った資金はすべて、元金の返済に充てられます。これにより借入れた元金がグッと減るため、支払う利息が減り、住宅ローンの総返済額も減らせます。

繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。

期間短縮型は毎月の返済額はそのままで返済期間を短くする方法です。返済額軽減型は返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法です。利息の軽減効果は、期間短縮型のほうが大きくなります。

<期間短縮型と返済額軽減型>

(株)Money&You作成

繰り上げ返済の最大のメリットは、期間短縮型でも返済額軽減型でも、将来支払う利息の負担を減らせること。早い時期(残存ローン期間が長い時期)に繰り上げ返済をするほど、それだけ利息の軽減効果が大きくなり、繰り上げ返済の効果が上がります。

金利が上昇する前に繰り上げ返済を行い元金を減らしておけば、将来的な金利上昇の影響を抑えることができます。

期間短縮型の場合、毎月の返済負担額は変わりませんが、予定より早く住宅ローンを完済できます。「定年までに完済したい」「老後に住宅ローンを残したくない」という人の大きなメリットになります。返済額軽減型も、毎月の返済の負担が減るので生活がしやすくなるメリットがあります。

住宅ローンは「借金」には違いありませんので、「借金が減っていく安心感」も忘れてはいけません。繰り上げ返済をすることで残高が減れば、気持ちも楽になるでしょう。

●金利上昇時代の「5年ルール」や「125%ルール」は要注意

変動金利型の住宅ローンには「5年ルール」や「125%ルール」があります。

5年ルールは、金利は半年ごとに見直されても、毎月の返済額は5年に1度しか見直されないという仕組み。125%ルールは、返済額が見直されるときでも、前回の返済額の125%までしか増えないという仕組みです。

5年ルールや125%ルールがあれば、金利が上昇しても、毎月の家計負担は抑えられるので安心と思われるかもしれません。しかし、返済額が減るわけではないのです。

あくまで「返済額の急激な増加を抑えるための仕組み」でしかありません。ルールが適用されても、毎月の返済額が急に上がらないだけであり、半年ごとに金利は見直されて計算される利息が繰り延べされているだけです。

また、同じ返済額の中でも利息に回る割合が増えますので、元金が減りにくくなります。

たとえば、毎月10万円払っていても、以前は元金9万5000円、利息5000円だったものが、金利上昇後は元金9万円、利息1万円になるようなイメージです。支払いは同じでも、借金の減り方が遅くなります。

125%を超えた分が消えるわけではありません。利息の返済が先送りされるだけなので、最後に元金や利息が残る可能性もあります。最終返済時点で残った元金や未払い利息などは、最後の返済日に一括で返済する可能性もあります。最終回の返済額が、場合によっては数百万円規模に膨らんでしまうケースもあるのです。

最終回で返済できるお金が手元にない場合は、家を売却して返済期間の延長や借り換えを検討しなければならないケースもあります。

住宅ローンの繰り上げ返済前に確認すべき3つの理由

借金というと「早く返したほうがよい」と考えがちですが、住宅ローンは単なる借金ではありません。あえて早く返さないほうがよい場合もあります。その理由としては、以下のようなものが挙げられます。

●団信(団体信用生命保険)がある

住宅ローンを利用するときには通常、団信(団体信用生命保険)という保険に加入します。団信に加入していると、住宅ローンの契約者が亡くなったり所定の高度障害になったりした際に、住宅ローンの残債がゼロになるので、家族などに住宅ローンのない家を遺すことができます。

仮に一括で住宅を買ったとしても、家族などに住宅ローンのない家を遺すことができますが、そのために数千万円、場合によっては1億円以上のお金を支払うことになります。負担は相当なものでしょう。

住宅ローンを繰り上げ返済せずに残しておけば、その分の保障を別の生命保険で補う必要がなくなります。

●手元資金で今後に備えられる

近年はインフレが進んでおり、毎月の家計の負担も増すばかりです。まとまった資金を住宅ローン返済に充ててしまうと、いざというときに資金不足になる可能性もあります。

繰り上げ返済したお金を取り返すことはできませんが、現金として持っていれば、急な病気やケガ、失業、住宅の修繕費、子どもの教育費など、さまざまな支出に対応できます。

住宅ローンの返済だけを考えるのではなく、生活防衛資金を確保しておくことも重要です。

●運用資金を確保できる

住宅ローンの変動金利は2026年7月時点では1%前後の商品が多く見られます。繰り上げ返済すれば、繰り上げ返済した部分にかかる1%前後の利息を減らすことができます。しかし、繰り上げ返済の資金を運用して年3%ずつ増やすことができたら、住宅ローンの返済をしながら、差し引き2%ずつお金を増やせる計算です。

金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」では、1989年以降「長期・積立・分散投資」を保有期間20年では元本割れしたケースは確認されず、投資収益率が年2〜8%の間に収斂するというデータが示されています。投資に「絶対に儲かる」はないものの、繰り上げ返済するよりも資産形成につながる可能性は十分にあるでしょう。

住宅ローンの繰り上げ返済、判断すべき3つの軸とは

では、金利が上昇している今、繰り上げ返済はどう考えればよいのでしょうか。

判断する際には、次の3つの視点で考えるとよいでしょう。

●(1)生活防衛資金は十分あるか

生活防衛資金を十分に確保しても繰り上げ返済できるだけのお金があるかを確認しましょう。生活防衛資金の目安は最低でも「生活費6か月分」。現預金で必ず確保しましょう。

長い人生の間には、病気やケガで働けなくなったり、リストラにあったりすることがないとは言えません。そうした万が一のときに使うお金がないと生活に困ってしまいます。もちろん、いざというときには傷病手当金や失業給付などを受給できます。しかし、傷病手当金や失業給付の受給中も、所得税の支払いはありませんが、住民税(前年度の所得に基づいて翌年度に支払うルールのため)と社会保険料の支払いは続きます。それらを支払うと、手元にはあまりお金が残りません。

また、近いうちにまとまった支出があるなら、その資金まで繰り上げ返済に回すのは避けましょう。

●(2)金利負担はどれくらい増えるか

住宅ローン金利は以前より確かに上昇していますが、それでも2026年7月時点では変動金利でも1%前後。1970年代〜90年代初頭バブル期前後には5%〜8%あったことから考えると、依然低い水準といえます。

今後さらに金利が上昇する可能性はありますが、金利上昇が急激に起こる可能性は低いでしょう。日本の政策金利は0.25%ずつ、ジリジリと上昇していく可能性が高いです。

よって、少し上昇したからといって「慌てて返済する」というほどではないのが実態です。住宅ローン返済予定表の確認や、返済額の増加がどれくらいになるのかを把握してから繰り上げ返済するかどうかを決めるのがよいでしょう。

●(3)保障・資産形成とのバランスはどうか

住宅ローンには団信という保障があります。また、まとまったお金をNISAやiDeCoを利用して長期運用することで、繰り上げ返済するよりも資産を増やせる可能性があります。

余裕資金があるから繰り上げ返済するのではなく、団信で保障を維持しながら、必要な現金や運用資金を確保するほうが合理的でしょう。繰り上げ返済は、返済額だけではなく、保障や資産形成まで含めて考えることが重要です。

住宅ローンの繰り上げ返済は今すぐ焦る必要はない理由

住宅ローンを変動金利で借りているならば、金利上昇のニュースに不安を覚える人もいるでしょう。しかし、住宅ローン金利はまだ低い水準ですし、団信という保障も得られます。繰り上げ返済の資金を手元資金として活用したり、資産運用で増やしたりする方法もあります。焦って繰り上げ返済する必要はありません。

もちろん、十分な余裕資金があり、今後の生活にも支障がなく、利息を少しでも減らしたいという人なら、繰り上げ返済を検討する価値はあります。

しかし、余裕資金があるならば投資で増やしたり生活満足度を高めたりするために使った方が優先順位は高いでしょう。住宅ローンを返済している間も人生です。家を買うために今の生活を犠牲にするのは本末転倒です。よく考えたうえで、繰り上げ返済をするようにしましょう。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。確定拠出年金制度の運用改善等に関する有識者懇談会構成員。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保のアフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍120冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

参考リンク:

繰り上げ返済の判断軸を掴んだら、資産全体のバランスも見直してみませんか。

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