1. HOME
  2. NISA・iDeCo・税制理解
  3. NISA売却のタイミングは?出口戦略より大切な判断軸とは

NISA売却のタイミングは?出口戦略より大切な判断軸とは

「NISA売却のタイミング」に迷う人は少なくありません。市場が好調な今、NISAで利益が出ている人は多く、日本証券業協会の調査でも3〜4割程度が2025年中に資産を売却しています。しかし多少の利益で売ってしまうと、複利効果を活かした長期の資産形成が難しくなります。大切なのは、売却の是非ではなく「何のために売るのか」という判断軸です。本記事では、NISAを売却してよいタイミングと、老後資金を安心して取り崩すためのキャッシュフロー資産という考え方を紹介します。

NISAを売却している人はどれくらいいる?

NISAを長期にわたって利用するつもりで投資を始めたとしても、いざ利益が出てきたら売却して利益を確定したいと思うかもしれません。この数年、市場は総じて右肩上がりで、日経平均株価も7万円の大台を初めて突破。米国のS&P500などの指数も同様に史上最高値をたびたび更新する展開です。NISAを利用している人の多くが利益を抱えている(含み益がある)状態になっているでしょう。

今後市場がどう動くかはわかりませんが、もしも値下がりしてしまえば含み益が少なくなってしまいます。場合によっては逆に損失を抱える(含み損がある)状態になってしまうかもしれません。そうなる前に売却して利益を確定したいと考えるのはある意味自然なことでしょう。

実際、NISAの資産を売却している人は意外と多い印象です。

日本証券業協会が2025年にNISAで金融商品を購入した7926人を対象に行った調査によると、2025年中に1銘柄も売却していない人はつみたて投資枠で64.5%、成長投資枠で56.4%となっています。裏を返せば、つみたて投資枠で35.5%、成長投資枠で43.6%の人は2025年中にNISAの資産を何かしら売却していることになります。

<2025年中の新NISAにおける売却状況>

参照:日本証券業協会「新NISA開始後の利用動向に関する調査」より

同調査によると、2025年中に実現益(含み益のある商品を売却することで発生した利益)が発生した割合はつみたて投資枠で63.9%、成長投資枠で60.9%。実現損(含み損のある商品を売却することで発生した損失)が発生した割合はつみたて投資枠で2.8%、成長投資枠で4.7%となっています(なお、残りの3割強は実現損益を「把握していない」)。

調査からはなぜ売却したかまではわかりませんが、「ちょっと利益が出たから」と売却した人もいるはずです。幸い、利益があった人が多いようですが、損失を出している人もいることがわかります。

NISA売却のタイミングはいつがいい?売っていい場合とNG例

NISAの投資先が値上がりするのは嬉しいものですが、多少利益が出たからといって売却してしまうのはNGです。

NISAのつみたて投資枠で投資できる投資信託はいずれも投資の王道である「長期・積立・分散」と相性がよい商品が揃っています。

長期投資をすることで複利効果(利息や運用益が次の利息や運用益を生み出していくこと)を味方につけて資産を増やすことができ、積立投資をすることで平均購入単価を下げることができ、分散投資することでリスクを抑えて増やすことができます。NISAを利用して投資を行うことで、利益は非課税で受け取れます。しかし、多少利益が出たからと売却してしまったら、複利効果を活かした資産形成ができなくなってしまいます。

反対に、市場が大きく暴落しているときに慌てて売却するのもNG。

暴落に慌てて売却してしまうと、その時点で利益(または損失)が確定し、その後の資産回復・上昇の恩恵を一切受けられなくなるからです。暴落時に無傷でいられる投資先はほとんどありませんので、値下がりが怖くなるのはわかります。

もちろん「必ず元の水準に戻る」という保証はできませんが、過去を振り返っても下がり続けた相場はなく、数ヶ月から長くても数年程度で元の水準を回復しています。

世界株インデックスファンドなどで世界全体の株式市場に投資をしているならば、将来的には、世界の経済成長に合わせて今より高い株価水準にいる可能性は高いでしょう。慌てて売却するとその恩恵が受けられなくなります。

NISAを売却してもいいのは「お金を使うライフイベントが発生したとき」です。お金は将来使うため、もっといえば人生を豊かにするために貯めているのですから、お金を使うライフイベントが発生したら、そのライフイベントに使う分だけ売却して、引き出したお金をライフイベントに活用すればよいでしょう。

日々の生活費や趣味の娯楽費などを削ってでもNISAでの投資を優先させるのもおかしな話です。無理をしてNISAに資金を投入したせいで家計が苦しくなる「NISA貧乏」が最近話題になっていますが、人生の幸福度の観点からは全くおすすめできません。

お金を増やすことが目的化し、毎月の積立額や資産額が多いことがステータスになってしまっていないでしょうか。SNSなどの情報を見て、「あの人はもっと貯めている」「この金額では不安だ」と考え、さらに生活を切り詰めてNISAに投資するようになっているなら要注意です。

NISAはどんな資金を用意するのに向いている?

お金は、目的・時期に合わせて適した金融商品・制度で貯めることが重要です。時期は「短期」「中期」「長期」と3つにわけるのがベターです。

<目的・時期に合わせて適した商品で貯める>

(株)Money&You作成

NISAで用意するのに適しているのは、「10年以上使わない将来のためのお金」。子どもの大学資金や自分たちの老後資金など、必要となる時期までに時間の余裕があるお金が該当します。また、10年以上先に車の買い替え、リフォーム、学び直しといった予定がある場合は、それらのための費用も含みます。

NISAで投資する株や投資信託には値動きがあり、元本割れのリスクがあります。日々の生活のために必要なお金や、数年以内に訪れるライフイベントのための必要なお金をNISAで活用し、元本割れしてしまったら困ってしまいます。しかし、長期で使う目的がない資金であれば、NISAを活用した「長期・積立・分散」投資をすることで資産を堅実に増やせる可能性があります。

老後資金はなぜ取り崩しにくい?キャッシュフロー資産が鍵に

子どもの大学資金はまだ「いくら」と決まっているので使いやすいかもしれませんが、老後資金は用意しても取り崩せていないという実態があります。

内閣府「令和6年度 年次経済財政報告(経済財政白書)」によれば、20代以降は歳を重ねるほど資産額が増え、60~64歳でピークを迎えます。65歳時点の平均値は1800万円、中央値は1000万円です。しかしその後は資産額があまり減らず、80歳時点で1~2割程度しか減っていません。

<年齢階層別の資産の保有状況>

参照:内閣府「令和6年度年次経済財政報告」より

あの世にお金を持っていけるならばいいのですが、そんなことはありません。

一方で、現役時代に築いた資産を老後に取り崩し、寿命を迎えるまでにゼロにできれば理想ですがそれも難しい。寿命がいつかわからない以上、お金を使い切るのは不安だからです。

老後資金を全部とまではいかなくても、取り崩して使いやすくするには、定期的にキャッシュフローがきちんとあることが必要です。お金は、キャッシュフローがあることで初めて安心して使えるものだからです。

現役時代は、堅実に一部を貯蓄していた人もいるでしょうし、あまり貯蓄せずに散財していた人もいるでしょうが、いずれにせよ「働いていれば毎月給与が入ってくる」という安心感があるからこそ、お金を安心して使うことができます。

退職して老後を迎えれば、2ヶ月に1回、偶数月に2ヶ月分の年金がもらえるようになりますが、年金だけで生活できるほどもらえる人はまずいません。キャッシュフローが不足しているので、お金を安心して使えなくなってしまいます。

NISAに加えて、資産の一部でキャッシュフローを得られる資産(CF資産)に投資し、そこから定期的に配当金・分配金・利息が得られれば、老後資金を取り崩しても毎月の生活に困ることは少なくなります。

<キャッシュフローが得られる資産>

(株)Money&You作成

キャッシュフローが得られる金融資産にはいろいろあり、目安となる金利や配当利回り、分配金利回りは異なります。図はリスクが低いものから高いものに並べたものです。

どれにするかは好みやリスク許容度に合わせて選んでいただければよいでしょう。

キャッシュフロー資産の中で不動産投資が最強といえる理由

最強のCF資産は投資用不動産です。不動産投資では、購入した不動産を他の人や会社に貸し出すことで毎月家賃収入というキャッシュフローを得ることができます。

不動産投資は通常、ローンを組んで物件を購入し、得られた家賃収入で返済を行うため、返済中の収入はないか、あってもごくわずかです。つまり、現役時代である資産形成期ではほとんど役に立ちませんが、ローンの返済が終われば、家賃収入がそのまま収入になります。すると、キャッシュフローは大幅なプラスになります。

返済が終わる時期は、多くの場合、老後の資産取り崩し期。毎月収入があるので、NISA・iDeCoなどで築いた資産も取り崩しやすくなります。

ローンを借りて不動産投資を行うときには、ほとんどの場合、団体信用生命保険(団信)に加入します。団信は、ローンを返済している人が亡くなったり、高度障害状態になったりしたときにローンが完済されて、以後のローンの支払いがゼロになる保険です。ローンの返済中にもしものことがあっても、遺族にローンのない物件を残せますし、遺族も不動産投資を続けることで、安定した家賃収入を得られます。不動産投資が死亡保険の代わりにもなる、というわけです。

不動産をそのまま家族などに残した場合も、相続税を計算するときの基準となる「相続税評価額」が現金などの金融資産で相続した場合よりもグッと抑えられるので、相続税対策にもつながります。

将来時点の人生を豊かにするために資産形成を行うのに、資産を取り崩す時期が来てもお金を一向に使えないのは、宝の持ち腐れです。

投資用不動産を筆頭にCF資産を保有して、お金を取り崩して使いやすくなる資産配分をぜひ実践してみてください。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。確定拠出年金制度の運用改善等に関する有識者懇談会構成員。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保のアフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍120冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。

X→ @yorifujitaiki

売却の判断軸を掴んだら、次は資産全体の配分を見直してみませんか。

関連記事

【不動産投資について】インヴァランス